奨学金の返還はいつから・いくら?10月27日の初回引き落とし前に親子で確認する3つ【減額返還・猶予・贈与税】

朝の窓辺で、奨学金の返還開始の通知を親子で一緒に確認している父と娘

※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。

結論:奨学金の返還は「貸与が終わった月の翌月から数えて7か月目」に始まります。2026年3月に卒業した人なら、最初の引き落としは2026年10月27日です。そして払えなくなったときの制度は2つあり、どちらも「延滞する前に」願い出るのが条件です。

この記事は、今年の秋から返還が始まるお子さんを持つ40代・50代の親御さんと、ご自身がいま返還の途中にある40代の方に向けて書いています。日本学生支援機構(JASSO)の公式資料だけを出典に、いつ・いくら引き落とされるのか、延滞すると何が起きるのか、払えないときに何ができるのか、親が手を出してよい範囲はどこまでかを、一つずつ確かめていきます。

ユウナ
ユウナ

うちの子、今年の春に卒業して、奨学金の返還が10月から始まるって。親として何かしてあげた方がいいのかな。全部返してあげたい気持ちもあるんだけど……

パパ
パパ

その気持ちは分かる。でも「全部返してあげる」より先にやることがあるんだ。返還は本人名義の口座から毎月27日に引き落とされる。最初の1回が落ちるかどうかで、その後の15年がずいぶん変わる。親にできることは、お金を出すことより、仕組みを一緒に確認することだよ。

この記事で分かること①返還が始まる日と引き落としの仕組み ②いくらを何年払うのか(JASSO公式の返還例) ③延滞すると何が起きるか(延滞金・信用情報・督促の順番) ④払えないときの2つの制度と要件 ⑤親ができること・してはいけないこと(肩代わりと贈与税) ⑥繰上返還を急がなくていい理由

目次

結論|返還は「貸与終了の翌月から7か月目」。今月中に親子で確認する3つ

先に、いちばん大事な日付と数字を表にまとめます。

項目内容(JASSO公式)
返還が始まる月貸与終了の翌月から数えて7か月目。3月満期で貸与終了なら10月
引き落とし日毎月27日(金融機関が休みの日は翌営業日)。本人名義の口座振替(リレー口座)
返還の方法口座振替のみ。事前に「口座振替(リレー口座)加入手続」が必要
8月に届くもの機構から「口座振替(リレー口座)加入通知」。ここに毎月の返還額と振替口座が書いてある
払えないときの制度減額返還制度(月額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に)/返還期限猶予(一定期間止める)。どちらも延滞する前に願い出る
延滞すると振替不能1回目は延滞金なし。2か月連続から延滞金(年3%)、3か月以上で個人信用情報機関に登録される
日本学生支援機構「返還を始める皆さんへ」「減額返還制度の概要」「延滞金」「個人信用情報機関への登録」より(2026年9月11日確認)。

この表を踏まえて、今月中に親子で確認していただきたいのは次の3つです。

  1. 8月に届いた「口座振替(リレー口座)加入通知」を本人と一緒に開き、毎月の返還額・回数・振替口座を確認する(届いていなければ手続きが済んでいない可能性があります)
  2. 10月27日の前日に、その口座に返還額以上の残高があるかを確認する習慣を、本人が自分で作る(親が毎月見るのではなく、最初の数回だけ声をかける)
  3. 「払えなくなったら延滞する前にJASSOに願い出る」という一文を、本人が知っている状態にしておく

3つともお金は1円もかかりません。それでいて、この記事で後述する統計を見ると、延滞の大半はこの3つで防げる種類のものだと分かります。

章末まとめ返還開始=貸与終了の翌月から7か月目・毎月27日。親子で確認するのは①加入通知の中身 ②27日前日の残高 ③困ったら延滞する前に願い出る、の3つ

奨学金の返還とは?|「返済」と呼ばない理由と、第一種・第二種の違い

奨学金の返還とは?

奨学金の返還とは、貸与型奨学金として在学中に借りたお金を、卒業後に毎月決まった額ずつ日本学生支援機構(JASSO)に返していくことです。JASSOは「返済」ではなく「返還」という言葉を使います。返ってきたお金が次の世代の学生の奨学金の原資になるという制度の性格を表した言葉で、本記事もこれに合わせます。

返ってきたお金が次の学生に回る、という点は、親の立場で覚えておく価値があります。延滞は本人の信用の問題であると同時に、次の学生の原資が減る話でもあるからです。

リレー口座とは?

リレー口座とは、返還金を毎月引き落とすために本人名義で登録する口座のことです。「次の世代へ奨学金をリレーする」という意味で名付けられています。返還は口座振替(引き落とし)だけで、振込用紙で毎月払う方式はありません。ですからこの口座に残高がなければ、それだけで延滞になります

第一種と第二種の違い|返還で効いてくるのは「利子の有無」

第一種奨学金第二種奨学金
利子無利子有利子(上限年3.0%)
返還月額の決まり方貸与総額を回数で割った定額(所得連動返還方式を選んだ人は収入に応じて変動)元金+利子を回数で割った定額(元利均等)
利率の決まり方貸与終了時に決定。「利率固定方式」か「利率見直し方式(おおむね5年ごと)」を選ぶ
返還期間の延長で利子は増えるか減額返還・猶予で期間が延びても、利子の総額は増えない(JASSO明記)
JASSO「返還を始める皆さんへ」「2026年度在学者用 貸与奨学金案内」より。

親御さんに確認していただきたいのは、お子さんが借りたのが第一種か第二種か、第二種なら固定と見直しのどちらかです。この違いで、後述する「繰上返還を急ぐべきか」の答えが変わります。加入通知に書いてあります。

章末まとめ返還は「返済」でなく次の学生へつなぐ「返還」。引き落としはリレー口座からのみ。第一種は無利子・第二種は有利子(上限3%)で、減額返還や猶予で期間が延びても利子総額は増えない

いくら・何年払うのか|JASSO公式の返還例と、回数が決まる仕組み

「毎月いくら、何年」は、借りた総額でほぼ機械的に決まります。JASSOが公開している大学4年間(48か月)の返還例をそのまま載せます。

第一種(無利子)の返還例

区分貸与月額貸与総額返還月額返還回数(年数)
国公立・自宅45,000円2,160,000円12,857円168回(14年)
国公立・自宅外51,000円2,448,000円13,600円180回(15年)
私立・自宅54,000円2,592,000円14,400円180回(15年)
私立・自宅外64,000円3,072,000円14,222円216回(18年)
月3万円の場合30,000円1,440,000円9,230円156回(13年)
JASSO「大学・返還例」(定額返還方式・48か月貸与)より。2026年9月11日確認。

第二種(有利子)の返還例

貸与月額貸与総額年利返還総額返還月額返還回数(年数)
5万円2,400,000円0.5%2,497,419円13,874円180回(15年)
1%2,597,188円14,428円
2%2,803,404円15,574円
3%(上限)3,018,568円16,769円
8万円3,840,000円0.5%4,045,295円16,855円240回(20年)
2%4,699,817円19,582円
3%(上限)5,167,586円21,531円
JASSO「大学・返還例」(48か月貸与・元利均等)より抜粋。2025年11月に貸与が終了した人の利率固定方式の利率は年2.112%(2026年度在学者用 貸与奨学金案内)=上の「2%」の行がいちばん近い目安です。

ここで一つ、親御さんに知っておいていただきたいことがあります。第二種の利率は、いま2%台です。「奨学金は低金利」という記憶は、0.1%台だった数年前のものです。月5万円を4年借りると、2%なら利子だけで約40万円になります。数字を責める話ではなく、返還が始まる前に、いまの利率で総額を見ておくのが親子の会話の出発点になります。

返還回数はどう決まるのか|「割賦金の基礎額」で機械的に決まる

返還回数(年数)は、借りた総額を「割賦金の基礎額」で割った数で決まります。基礎額は総額に応じてJASSOが定めています。

貸与総額割賦金の基礎額返還年数の目安
200,000円以下30,000円約7年以内
1,100,001〜1,300,000円100,000円11〜13年
1,900,001〜2,100,000円140,000円約14〜15年
2,300,001〜2,500,000円160,000円約15年
2,500,001〜3,400,000円170,000円約15〜20年
3,400,001円以上総額の20分の120年
JASSO「返還期間と割賦金」より抜粋。年数の目安は当ブログ算出(総額÷基礎額)。

たとえば私立・自宅の第一種2,592,000円は、基礎額170,000円で割ると15.2年→1年未満を切り捨てて15年(180回)340万円を超えると一律に20年(240回)です。23歳で返還が始まれば、15年なら38歳、20年なら43歳で完済。40代の親御さんが、ちょうどご自身の年齢まで返し続ける計算です。

ユウナ
ユウナ

15年とか20年って聞くと、やっぱり長いね……。うちの子、その頃には結婚して家を買う年齢かもしれないのに。

パパ
パパ

だからこそ「延滞をしない」ことが、金額以上に大事なんだ。次の章で説明するけど、住宅ローンの審査で見られるのは奨学金の残高より、延滞の記録のほうなんだよ。

章末まとめ月額と年数は借りた総額でほぼ機械的に決まる(私立・自宅の第一種=14,400円×15年)。第二種のいまの固定利率は2.112%で、月5万円×4年なら利子だけで約40万円。340万円超は一律20年

延滞すると何が起きるか|怖いのは延滞金の額ではなく「記録」

まず、延滞したときに何がどの順番で起きるかを、JASSOの公式資料どおりに並べます。

時期JASSOの対応(公式)本人に起きること
振替不能1回目「振替不能通知」を発送。翌月27日に2か月分をまとめて振替延滞金はかからない(JASSO明記)
2回目以降〜延滞3か月まで文書と電話による督促・返還期限猶予制度の案内。翌月に未納分をまとめて振替延滞金(年3%)が日割りで加算
延滞3か月以上個人信用情報機関に登録(返還を始めたばかりの人は、返還開始から6か月経過時点で延滞3か月以上の場合)
延滞4〜9か月債権回収会社(サービサー)に委託して個別返還指導(文書・電話・訪問)
サービサー対応の後(長期化した場合)人的保証=支払督促申立予告→裁判所へ支払督促申立/機関保証=催告書→保証機関へ代位弁済請求。段階を踏まずに突然行われることはない(JASSO明記)連帯保証人(多くは親)に請求、または保証機関が立替後に本人へ請求
JASSO「延滞した場合の督促の流れ」「個人信用情報機関への登録」「延滞金」より(2026年9月11日確認)。段階を踏まずに突然裁判所の手続きや代位弁済請求が行われることはない、とJASSOは明記しています。

延滞金は月14,400円なら「1か月で約35円」——金額は怖くない

延滞金は年3%(2020年3月28日以降)で、延滞している割賦金に日割りでかかります。私立・自宅の第一種の返還月額14,400円を1か月延滞した場合、14,400円×3%×30日÷365日=約35円です。3か月でも約107円。しかも振替不能の1回目には延滞金そのものがかかりません(2か月連続で落ちなかった場合から賦課)。金額だけを見れば、大したことはありません(当ブログ算出)。

本当に怖いのは「延滞3か月」で個人信用情報機関に登録されること

延滞が3か月以上になると、個人信用情報機関への登録対象になります。登録されると、JASSOの公式説明のとおり「スマートフォンの分割払いやクレジットカードの利用ができなくなる、また、住宅ローン等の各種ローンが組めなくなる場合があります」。しかもこの情報は、延滞を解消した後も返還完了から5年後まで消えません

つまり、23歳で3か月延滞して38歳で完済した場合、43歳まで記録が残る計算になります。家を買う年齢と、まるごと重なります。先ほどの「延滞金35円」と並べると、延滞のコストは金額ではなく記録にあることがはっきりします。

統計|延滞の6割は「残高不足のうっかり」ゾーン

JASSOの最新データ集(令和8年1月)から、返還者と延滞者の実数を見ます。

項目(令和6年度末)人数・割合
返還者数(第一種・第二種を種別ごとに数えた統計上の人数)497万2千人(1人として数えると434万5千人)
1日以上延滞している人31万8千人(6.4%)
3か月以上延滞している人12万7千人(2.6%)
差=1日以上3か月未満の延滞者(当ブログ算出)約19万1千人=1日以上延滞者の約6割
新規返還者の初年度返還率97.2%
延滞額の合計723億円(返還を要する債権7兆4,719億円の約1%)
JASSO「奨学金事業に関するデータ集(令和8年1月)」より。差の算出は当ブログ。

注目していただきたいのは、1日以上延滞している31万8千人のうち、3か月以上まで進むのは12万7千人だという点です。残りの約19万1千人(約6割)は、3か月未満で解消していることになります。JASSO自身も、「振替口座の残高不足等によりうっかり延滞してしまった方も含まれており、その多くが3か月以内に延滞を解消しています」と説明しています。

言い換えると、延滞の大半は「払えない」のではなく「27日に残高がなかった」という種類のものです。これが、冒頭で「10月27日の前日に残高を見る習慣」をお願いした理由です。親が声をかける価値がいちばん高いのは、この最初の数回です。

ユウナ
ユウナ

6割がうっかり、って意外。でも確かに、給料日が25日で27日に引き落としだと、気づかないうちに残高が足りないこともありそう。

パパ
パパ

そう、給料が振り込まれる口座とリレー口座が別だと、それだけで起きる。対策は単純で、リレー口座を給与口座にするか、給料日の翌日に自動で移す設定にすること。仕組みで防げる延滞を、根性で防がなくていい。

章末まとめ延滞金は年3%=月14,400円なら1か月約35円で金額は小さい。怖いのは3か月延滞で個人信用情報機関に登録され、完済後5年まで消えないこと。統計では延滞の約6割が残高不足のうっかりゾーン=27日前日の残高確認で防げる。

払えないときの2つの制度|どちらも「延滞する前に」願い出るのが条件

収入が下がった、失業した、病気になった——そういうときのために、JASSOには2つの制度があります。どちらも「延滞していないこと」が前提で、延滞してから願い出ようとすると、まず延滞を解消しなければなりません。順番を間違えないでください。

減額返還制度返還期限猶予(一般猶予)
何をする制度か毎月の返還額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減らし、その分だけ期間を延ばす一定期間、返還そのものを止める(止めた分だけ終了が先送り)
収入の目安(給与所得者)年間収入400万円以下(扶養する子が2人なら500万円、3人以上なら600万円以下。被扶養者1人につき38万円を控除可)年間収入300万円以下(所得なら200万円以下)
1回の願出で適用される期間12か月まで(終了前に再度願い出れば延長可)1年ごとに願い出る
通算の上限15年(180か月)10年(120か月)(災害・傷病・生活保護・産休育休などは上限なし)
総額は減るか減らない(期間が延びるだけ。第二種の利子総額も増えない)減らない(元金も利子も免除されない)
その他の条件願出時に延滞していないこと/口座振替加入者/月賦返還であること延滞する前にすみやかに手続き
申請方法スカラネット・パーソナル(Web)。マイナンバー提出済みなら証明書類の郵送不要同左
JASSO「減額返還制度の概要」「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」「経済困難(一般猶予の申請事由)」「2026年10月から返還が始まる皆さんへ」より(2026年9月11日確認)。

減額返還を選ぶと、月額はいくらになるか

減額の割合私立・自宅 第一種(14,400円)の場合ひとこと
2分の17,200円いちばん使われる形。期間は延びるが総額は同じ
3分の14,800円
4分の13,600円
3分の29,600円少しだけ軽くしたいとき
当ブログ算出(14,400円×割合)。

JASSOは「将来への負担を少しでも軽くするために、返還期限猶予より減額返還の利用をおすすめします」と公式に書いています。猶予は返還が完全に止まるぶん再開時の負担感が大きく、減額返還は毎月の返還習慣を切らさずに額だけ軽くできるからです。

返還が始まったばかりの人は「新卒等」の事由で申請できる

2026年10月から返還が始まる人向けに、JASSOは専用の案内ページを設けています。2025年12月以後に卒業した人は、収入の証明が難しい時期なので「新卒等」という事由で願い出ることになっています。「自分は対象にならないだろう」と思い込んで延滞するのが、いちばん避けたいパターンです。

パパ
パパ

ここは親が知っていて、子が知らないことが多い。制度の名前だけでいい、「減額返還」と「返還期限猶予」という言葉を、本人に一度伝えておいてほしい。困ったときに検索する言葉を持っているかどうかで、延滞になるかならないかが分かれる。

章末まとめ減額返還=月額を1/2〜2/3に・年収400万円以下・通算15年猶予=止める・年収300万円以下・通算10年。どちらも延滞前に願い出る。総額は減らないが、第二種でも利子総額は増えない。JASSOは減額返還を推奨。

親ができること・してはいけないこと|肩代わりと贈与税の線

ここまでは本人の話でした。ここからは親の立場でできることを、してよいこと・気をつけること・しなくてよいことに分けます。

①してよいこと|「27日の前日、残高ある?」の一言

先ほどの統計のとおり、延滞の大半は残高不足のうっかりです。最初の数か月だけ、27日の前日に一言かける。これがお金を1円も使わずにできる、いちばん効果の大きい親の役割です。数回で本人が習慣にしたら、それ以降は手を引きます。

②気をつけること|肩代わりは「贈与」になる

親が子の奨学金の返還を肩代わりすると、原則として子への贈与にあたります。国税庁の説明では、扶養義務者からの生活費や教育費に充てるための贈与で通常必要と認められるものは贈与税がかかりませんが、「必要な都度直接これらに充てるためのものに限られ」、預金や借入の返済に充てる場合は贈与税がかかるとされています。卒業後の奨学金の返還は在学中の教育費そのものではなく、本人の借入の返済です。

ただし、贈与税には年110万円の基礎控除があります。1年間に受けた贈与の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です(国税庁タックスアンサーNo.4402)。月1万円の援助なら年12万円、月2万円でも年24万円ですから、基礎控除の範囲に十分収まります

親の関わり方贈与税の観点FPとしての見方
毎月1〜2万円を本人に渡し、本人が返還する年12〜24万円=110万円以下で申告不要本人名義の返還習慣を壊さない。おすすめ
残額をまとめて一括で肩代わり(例:240万円)110万円を超える部分に贈与税の可能性。事前に税務署・税理士へ親の老後資金を削ってまで行う理由は薄い(第一種は無利子)
親がリレー口座に毎月入金する形式上は贈与。年110万円以下なら申告不要本人が「自分の返還」と認識しにくくなる点に注意
国税庁タックスアンサーNo.4402・No.4405をもとに当ブログが整理。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

③知っておくこと|連帯保証人になっているなら、延滞は親の問題でもある

奨学金の保証には「人的保証」(親などが連帯保証人・保証人になる)「機関保証」(保証機関に保証料を払う)があります。人的保証を選んでいる場合、本人が延滞すると連帯保証人にも督促が来ます。JASSOは延滞時に「本人、連帯保証人、保証人に対して文書と電話で督促する」と明記しています。ご自身がどちらの保証かは、貸与時の書類か本人のスカラネット・パーソナルで確認できます

④勤め先に制度があるか|企業の奨学金返還支援(代理返還)は4,852社

企業が従業員に代わって返還額の一部または全部をJASSOに直接送金する「代理返還」制度があり、令和8年3月末時点で全国4,852社が利用しています(JASSO)。従業員側の利点は、企業がJASSOに直接送金するため給与と区分され、その返還額にかかる所得税が非課税となり得ることです(役員などは対象外の場合あり)。お子さんの勤め先に制度があるかは、JASSOの「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度検索」ページで、地域・業種・企業名のいずれかを入れて検索すれば、その場で分かります。親が肩代わりする前に、まず勤め先の制度を確認する順番をおすすめします。

章末まとめ親の役割は①27日前日の一言が最大。②肩代わりは原則贈与=年110万円以下なら申告不要で、月1〜2万円の援助は範囲内。③人的保証なら延滞の督促は親にも来る④勤め先の代理返還(4,852社)を先に確認

繰上返還は急がなくていい|第一種は理由がなく、第二種は利率で決まる

「早く返して身軽になりたい」——本人も親も、そう考えがちです。ただ、奨学金は住宅ローンやカードローンとは性格が違います。JASSOの繰上返還の仕組みと、FPとしての考え方を分けて書きます。

項目JASSO公式
できること返還額の全部または一部を繰り上げて返還。手数料なし。登録済みの振替口座から引き落とし
利子(第二種)繰り上げた期間の利子はかからない(据置期間の利子はかかる)
できないとき返還期限猶予・減額返還の適用中は繰上返還できない
保証料(機関保証)繰上で期間が短縮されると保証料の一部が返ってくる場合がある
申込みスカラネット・パーソナルから。毎月繰り上げたいなら都度申込み
JASSO「繰上返還申込み」より(2026年9月11日確認)。

第一種(無利子)|繰上返還で得をすることは、ほぼない

第一種は無利子です。早く返しても総額は1円も変わりません。手元の現金を減らして、返しても減らない借金を先に消すことになります。返還を続けながら、同じお金を生活防衛資金やNISAに回すほうが合理的です。もちろん「借金があるのが精神的に嫌だ」という気持ちは尊重しますが、数字の上では急ぐ理由がありません

第二種(有利子)|利率2.112%と、他の使い道を比べる

第二種はいま固定で年2.112%(2025年11月貸与終了者)。繰上返還は「年2.112%で確実に増える貯金」と同じ意味を持ちます。これをどう見るかは、他の使い道との比較です。

お金の行き先期待できる効果FPとしての順番
生活防衛資金(生活費の数か月分)いざという時に延滞を防ぐ。延滞3か月=信用情報登録を避ける保険最優先。これが無いのに繰上返還するのは順序が逆
第二種の繰上返還年2.112%の確実な利子節約生活防衛資金が貯まった後の選択肢。急がなくてよい
NISAでの積立投資長期の株式インデックスは歴史的に年数%だが保証はない繰上返還と並行して考える。どちらが上とは断定しない
papa-fpの整理。特定の行動を勧めるものではありません。

もう一つ、親が肩代わりして一括繰上返還するケースも同じ物差しで見てください。第一種なら節約できる利子はゼロ、第二種でも2%台です。親御さんの老後資金を減らしてまで急ぐ理由は、数字の上にはありません。先ほどの贈与税の話と合わせて、月1〜2万円の援助を続けるほうが、本人の返還習慣も、親の家計も守れます。

ユウナ
ユウナ

早く返した方がいい、って思い込んでた。無利子なら急がなくていいのね。

パパ
パパ

そう。返さなくていいとは言わない。急がなくていい、という話。奨学金は「毎月27日に落ちる仕組みを守る」ことがすべてで、それさえ守れば15年でも20年でも構わない。先に守るべきは、残高が足りなくなったときの生活防衛資金のほうだよ。

章末まとめ繰上返還は手数料なし・繰上分の利子なし・猶予/減額中は不可第一種は急ぐ理由がない。第二種は年2.112%の確実な節約だが、順番は生活防衛資金→その後。親の一括肩代わりも同じ物差しで。

FP相談実例|3つの家庭の「返還が始まる秋」

実際にご相談を受けたケースを、個人が特定されないよう内容を変えて紹介します。

ケース1|Aさん(52歳・会社員)「子の240万円を、いま全部返してやりたい」 お子さんが今年3月に卒業。第二種で月5万円×4年=240万円、利率固定で月約1万5千円・15年の返還が10月から始まります。Aさんは「自分の貯金から一括で返してやりたい」とのご相談でした。

確認したのは3点。①一括240万円は年110万円の基礎控除を超え、贈与税の対象になり得ること。②Aさんご自身の老後資金がまだ途上であること。③お子さんの勤め先に代理返還制度があること(検索で判明)。

結論は「一括はしない」。勤め先の制度を申請し、足りない分を月1万円だけ援助する形に。年12万円で贈与税の心配はなく、Aさんの老後資金は減らず、お子さんの口座から毎月落ちる形も保てました。「全部返してやる」は、数字で見ると誰の得にもなっていませんでした。
ケース2|Bさん(40歳・会社員)「住宅ローンの審査前に、自分の奨学金を完済すべきか」 Bさんご自身が第一種(私立・自宅外、月14,222円×18年)を返還中で、残り1年あまり・残額約20万円。来年住宅ローンを組む予定で「奨学金が残っていると審査に不利では」と心配されていました。

お伝えしたのは、審査で問題になるのは残高より延滞の記録だということ。Bさんは17年間一度も延滞しておらず、個人信用情報に問題はありません。第一種は無利子なので、20万円を繰り上げても利子の節約はゼロ。その20万円は頭金か、住宅購入後の生活防衛資金に残すほうが効きます。

結果、繰上返還はせず、そのまま返還を続けて申込みへ。「借金が残っている=不利」という思い込みと、「延滞の記録がない=信用がある」という事実は別物でした。
ケース3|Cさん(49歳・会社員)「子が3か月延滞していると、督促の電話で知った」 人的保証の連帯保証人になっていたCさんに、JASSOから督促の電話。お子さんは転職の合間で収入が途切れ、返還月額1万4千円を3か月延滞していました。本人は「減額返還」も「猶予」も知らず、「払えないから放っておいた」状態。

手順は2段階でした。①まず延滞分(約4万2千円)を解消する(減額返還も猶予も「延滞していないこと」が条件のため、この順番を飛ばせない)。②その足でスカラネット・パーソナルから減額返還(2分の1)を願い出る。月額は7,000円になり、次の職が決まるまでの負担が半分に。

Cさんが後で悔やんでいたのは、「制度の名前を一つ教えておけば、3か月延滞しなかった」こと。信用情報への登録にぎりぎり間に合ったのは幸運でした。

心理面|「借金を背負わせた」罪悪感が、判断を狂わせる

奨学金の相談で、数字より先に出てくるのが親御さんの罪悪感です。「私たちに余裕がなかったから、子に借金を背負わせた」。この気持ちは自然ですが、そのまま行動に移すと、数字の上で損な選択をしやすくなります。3つの心理を分けて見ます。

①罪悪感の埋め合わせ|「一括で返してやる」は親のための行動になりやすい

一括の肩代わりは、子の負担を減らす行動であると同時に、親の罪悪感を消す行動でもあります。だから金額の妥当性より「早く楽にしてやりたい」が先に立ちます。第一種なら節約できる利子はゼロ、贈与税の可能性はある、親の老後資金は減る——この3点を並べてから決めても、遅くはありません。

②回避|「見たら負ける気がする」で通知を開かない

本人側に多いのが、返還額の通知や督促の封筒を「見たら現実になる気がして開けない」という回避です。開けないあいだに延滞は進み、3か月で信用情報に載ります。減額返還も猶予も、開けて、願い出た人にしか適用されません。親ができるのは、責めることではなく「開けるのを一緒にやる」ことです。

③現状維持|「うちの子は大丈夫」で確認しない

延滞の6割は残高不足のうっかりです。「大丈夫」と思っている家庭ほど、27日の残高を誰も見ていません。最初の3回だけ確認する、と期限を切れば、過保護にもなりません。

パパ
パパ

私自身、親として「借りさせて申し訳ない」と思う瞬間はある。でも罪悪感で動いたお金は、たいてい数字が合わない。申し訳なさは言葉で伝えて、お金は数字で決める。それが結局、子どもをいちばん守る。

章末まとめ親の罪悪感の埋め合わせ・本人の回避・家庭の現状維持の3つが判断を曇らせる。対策は数字を3点並べてから決める/通知は一緒に開ける/最初の3回だけ残高を見る

インフレを踏まえると|固定利率の返還は、時間とともに実質軽くなる

名目と実質とは?

名目とは、表示されている金額そのもの実質とは、その金額で実際に何が買えるかです。ラーメンが800円から1,000円になったとき、1,000円札は名目では同じでも、実質では「ラーメン1杯分」に目減りしています。日本銀行は物価上昇率2%を目標にしており、年2%が20年続くと物価は約1.49倍になります。

返還額は固定、給料は上がる(かもしれない)

奨学金の返還月額は名目で固定です。私立・自宅の第一種なら、23歳のときの14,400円も、38歳のときの14,400円も同じ額。ところが本人の給料と物価は、その15年で上がっていく可能性が高い。つまり返還の実質的な重さは、年を追うごとに軽くなります

時点返還月額(名目)物価が年2%で上がった場合の実質的な重さ(23歳時点の価値に換算)
23歳(返還開始)14,400円14,400円
30歳(7年後)14,400円約12,500円相当
38歳(完済・15年後)14,400円約10,700円相当
当ブログ算出(14,400円÷1.02^年数)。将来の物価・賃金を保証するものではありません。

第一種(無利子)なら、この目減りはそのまま返す側の得です。第二種でも、利率固定2.112%は物価目標2%とほぼ同じ水準ですから、実質の負担はほとんど増えません。だからこそ、繰上返還を急ぐより、返還を止めないことのほうが大事なのです。

逆に、親が老後資金を取り崩して一括で肩代わりすると、親側は「これから増やせたはずのお金」を失います。インフレに負けないために必要なのは、親も子も、それぞれの積立を止めないことです。

章末まとめ返還月額は名目固定=物価と給料が上がれば実質は軽くなる(15年で約4分の3)。無利子なら急ぐ理由がなく、2.112%固定でも実質負担はほぼ増えない。親の一括肩代わりは親側の「増やせたはずのお金」を失う。

よくある質問(FAQ)

Q|返還が始まる前に、親が代わりに一括で返すことはできますか?

できます(繰上返還は貸与終了の翌月から可能で、3月満期なら3月から可能)。ただし原則として子への贈与にあたり、年110万円を超える部分に贈与税がかかる可能性があります。第一種は無利子なので節約できる利子もありません。月1〜2万円の援助で年110万円以下に収めるほうが、税務上も家計上も無理がありません。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

Q|27日に残高が足りず、1回引き落とされませんでした。どうなりますか?

翌月27日に2か月分がまとめて引き落とされます。JASSOの公式説明では1回目の振替不能に延滞金はかかりません。2か月連続で落ちなかった場合から延滞金(年3%の日割り)が賦課され、3か月連続で落ちず、さらにその翌月も落ちなかった時点で個人信用情報機関への登録となります。翌月に2か月分の残高を用意すれば、記録には何も残りません。JASSOから文書や電話の案内が来るので、無視せず、翌月の残高を必ず確保してください。

Q|減額返還と返還期限猶予、どちらを選べばいいですか?

少しでも払えるなら減額返還です。JASSO自身が「将来への負担を少しでも軽くするために減額返還をおすすめします」と明記しています。収入がほぼ途絶えているなら猶予。どちらも延滞していないことが条件なので、迷っているあいだに27日を越えないでください。

Q|すでに3か月延滞しています。もう減額返還は使えませんか?

延滞を解消すれば願い出ができます(JASSO「延滞を解消することにより願出が可能となります」)。順番は①延滞分を返す→②減額返還または猶予を願い出る。延滞中の猶予申請の手続きも別途用意されています。放置がいちばん不利です。

Q|子の勤め先に代理返還制度があるか、どう調べますか?

JASSOの「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度検索」ページで、地域・業種・企業名から検索できます。令和8年3月末で4,852社。載っていなくても、社内の福利厚生担当に確認する価値はあります。

Q|親の私が連帯保証人です。子が払えなくなったら、いくら請求されますか?

人的保証の連帯保証人は、本人が延滞した場合、本人と同じ返還義務を負います。JASSOは延滞時に「本人、連帯保証人、保証人に督促する」と明記しています。ただし督促は段階的で、いきなり全額請求や裁判所の手続きになることはありません。本人が減額返還や猶予を願い出れば、そもそも延滞になりません。連帯保証人である親こそ、制度の名前を本人に伝えておく理由があります。


まとめ|今日やることは3つ

  • 返還開始=貸与終了の翌月から7か月目・毎月27日。2026年3月卒なら10月27日。8月に届いた加入通知に返還額と口座が書いてある
  • 延滞金は月35円程度でも、3か月延滞で個人信用情報に登録され完済後5年まで消えない。怖いのは金額でなく記録
  • 延滞の約6割は残高不足のうっかり(1日以上31.8万人−3か月以上12.7万人=19.1万人)
  • 払えないときは減額返還(年収400万円以下・通算15年)か猶予(年収300万円以下・通算10年)を、延滞する前に
  • 親の肩代わりは原則贈与=年110万円以下なら申告不要。月1〜2万円の援助はその範囲。第一種の繰上返還に数字上の得はない
  • 勤め先の代理返還(4,852社)を先に確認
今日の一歩①8月に届いた「口座振替(リレー口座)加入通知」を本人と一緒に開く ②10月27日の前日に残高を確認する約束を1つだけする ③「減額返還」「返還期限猶予」の2語を本人に伝える。3つとも10分で終わり、お金はかかりません。

教育費をこれから準備する段階の方は、大学費用500万円は40代から間に合う?中高生の教育費にNISAは使える?で、借りる前の設計を整理しています。返還が始まったあとの生活の土台づくりは生活防衛資金はいくら必要かをご覧ください。


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「借りさせて申し訳ない」を、お金で返そうとしなくていい。

私も40代の親です。子の進路を考えるたび、「もっと貯めておけば」と思う夜があります。
だから、一括で肩代わりしたくなる気持ちは、他人事ではありません。でもFPの勉強をして数字を並べたとき、その行動が守っているのは子の家計ではなく、自分の罪悪感だったと気づきました。

親にできるいちばん大きなことは、お金を出すことではなく、27日の前日に「残高ある?」と一言かけることと、「減額返還」という言葉を一つ渡しておくことでした。
15年後、完済の通知が届いた日に、子が「自分で返した」と言える。その一言のほうが、240万円より価値があると、私は思っています。

この記事を閉じたら、8月に届いた加入通知を、お子さんと一緒に開いてみてください。10分で終わります。
あなたとご家族が、お金の不安から自由になりますように。それがこのブログを書き続けている、たった一つの理由です。

※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。本記事の制度説明・数値はすべて日本学生支援機構および国税庁の公開資料を出典としており、広告の有無によって内容を変えることはありません。


免責事項

本記事は、更新時点(2026年9月11日)の日本学生支援機構(JASSO)および国税庁の公開資料をもとに、40代会社員FP(FP2級・簿記3級)が一般向けに整理したものです。返還月額・返還回数・利率は、貸与の種類・貸与総額・貸与終了時期・選択した返還方式によって個別に決まります。必ずご本人宛の「口座振替(リレー口座)加入通知」およびスカラネット・パーソナルでご確認ください。減額返還制度・返還期限猶予制度には要件と審査があり、必ず適用されるものではありません。個人信用情報機関への登録の影響は、金融機関ごとの判断によります。贈与税の取扱いは個別の事情によって異なります。金額が大きい場合は事前に税務署または税理士にご相談ください。本記事は特定の金融商品の購入や特定の行動を勧めるものではなく、個別の投資助言・税務助言を行うものではありません。


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この記事を書いた人

40代の会社員(営業職20年・店長/本部企画教育を経験)。FP技能士2級・日商簿記3級・損害保険大学課程 専門コースを取得。新NISAでのインデックス投資歴は5年で、SBI証券・楽天証券を運用中。妻と子ども2人・愛犬1匹の5人家族です。20代はパチンコとタバコでお金を浪費していましたが、結婚と子育てをきっかけにお金と向き合い直しました。同じ40代の会社員に向けて、金融庁・国税庁など一次情報を確認しながら、制度の仕組みと自分の実体験を等身大で発信しています。特定商品や個別プランの推奨は行いません。

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