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結論:医療保険が「いらない」かどうかは、加入率でも営業トークでもなく、①いつでも取り崩せる貯蓄が100万円あるか、②会社員の公的保障を知っているか、③不安を金額に変換できているか——この3つで判定できます。そして2026年8月から高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられましたが、引き上げ後も「判定の物差し」そのものは変わりません。この記事で、ご自身の答えを出すための材料をすべて並べます。
「医療保険はいらない」という記事と、「入らないと後悔する」という記事。検索すると両方が出てきて、読めば読むほど分からなくなる——そんな経験はないでしょうか。実は検索上位の記事の多くは、保険会社や保険相談サービスが書いたものです。つまり「最終的に保険を売る側」が書いた記事で、結論はどうしても「不安なら入っておきましょう」に寄ります。この記事は保険を売りません。40代の会社員として、自分の家計で判断してきた立場から、公的な統計と制度の数字だけで整理します。

ママ
うちの医療保険、夫婦で月1万円ちょっと払ってるの。でも入院なんてもう何年もしてないし、このままでいいのかな。かといって解約して、そのあと大きな病気をしたら…って考えると怖くて。

パパ
その「怖くて動けない」が、いちばん損をしやすい状態なんだ。まず入院したら実際にいくらかかるのかを数字で見てみよう。平均は思っているよりずっと小さいよ。そのうえで、うちの貯蓄で足りるかを判定すればいい。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 医療保険の「公的」と「民間」の違い(まずここで迷子にならない)
- 2025年最新調査で見る入院の現実(平均16.0日・自己負担18.7万円)
- 会社員の公的保障の三段構え(3割負担・高額療養費・傷病手当金)
- 2026年8月の高額療養費引き上げで判定はどう変わるか
- 「貯蓄100万円」で判定する3ステップと、いらない人・いる人の条件
- それでも不安になる3つの心理と、その外し方
医療保険とは?「公的」と「民間」を分けるところから始める
「医療保険はいらない」という議論が噛み合わない最大の原因は、「医療保険」という言葉が2つの意味で使われていることです。最初にここを分けます。
公的医療保険とは?|全員が強制加入している「国の保険」
公的医療保険とは、会社員なら健康保険(健保組合や協会けんぽ)、自営業なら国民健康保険として、日本に住む全員が加入している国の保険制度のことです。毎月の給与から健康保険料として天引きされているもので、病院の窓口で医療費が3割負担で済むのはこの制度のおかげです。「医療保険はいらない」議論で「いらない」と言われているのは、こちらではありません。公的医療保険は選択の余地なく全員が入っていますし、後で見るとおり、その保障はかなり手厚いものです。
民間医療保険とは?|任意で上乗せする「入院・手術の保険」
民間医療保険とは、保険会社と契約して、入院1日あたり5,000円〜1万円の「入院給付金」や、手術1回あたり数万円の「手術給付金」を受け取る任意の保険のことです。月々の保険料は商品や年齢・保障内容によって幅がありますが、40代で日額5,000円型なら月2,000〜5,000円程度が目安です(正確な金額は各社の公式サイトでご確認ください)。この記事で「いらないかどうか」を判定するのは、こちらの民間医療保険です。
では、みんなはどうしているのか。生命保険文化センターの2025(令和7)年度「生活保障に関する調査」によると、病気で入院したときに給付金が支払われる生命保険の加入率は65.6%。約3人に2人が何らかの形で民間の医療保障を持っている計算です。ただし、ここで注意したいことがあります。「65.6%が入っているから自分も入るべき」という理屈は、判断材料として成立しません。保険が必要かどうかは世帯ごとの貯蓄額と公的保障で決まるものであって、多数決で決まるものではないからです。次の章から、その判定材料を順に並べます。
データで見る入院の現実|平均16.0日・自己負担18.7万円【2025年最新調査】
医療保険を考えるとき、私たちの頭に浮かぶのは「長い入院」「高額な治療費」です。しかし実際の入院は、統計で見るとかなり違う姿をしています。生命保険文化センターの2025年度調査から、入院の「現実の数字」を並べます。
| 項目 | 数字 | 補足 |
|---|---|---|
| 過去5年間に入院を経験した人 | 17.7% | 約6人に1人 |
| 直近の入院日数の平均 | 16.0日 | 14日以内で退院した人が74.5% |
| 入院時の自己負担費用の平均 | 18.7万円 | 高額療養費制度の利用後。食事代・差額ベッド代・交通費等も含む |
| 1日あたりの自己負担費用の平均 | 24,300円 | 治療費のほか食事代・日用品・家族の交通費まで含んだ額 |
| 高額療養費制度を利用した人 | 67.6% | 入院経験者のうち |
| 入院で収入が減った人 | 18.3% | 「収入は減らなかった」と答えた人が59.3%と多数派 |
出典:生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」
注目してほしいのは2点です。1つ目は、入院の4分の3は2週間以内に終わっていること。「何ヶ月も入院したらどうしよう」という不安は自然な感情ですが、統計の中心は「約2週間・約19万円」です。2つ目は、平均18.7万円という自己負担額が、治療費だけでなく食事代・差額ベッド代・日用品・家族の交通費まで全部込みの数字だということです。つまり「入院1回で貯蓄が吹き飛ぶ」というイメージは、平均像とはかなり距離があります。
もちろん、平均から外れる入院もあります。厚生労働省の「令和5年患者調査」では、退院患者の平均在院日数は病院全体で29.3日、脳卒中などを含む循環器系の疾患では34.6日と、長引く病気があることも事実です。だからこそ、次の章の「公的保障がどこまで守ってくれるか」とセットで考える必要があります。

ママ
平均18.7万円…。うちの月1万円の保険料って、2年払えば入院1回分を自分で払えちゃう計算なのね。
会社員の公的保障は三段構え|3割負担・高額療養費・傷病手当金
40代の会社員には、民間保険に入る前から、すでに3つの保障が備わっています。この三段構えを知らないまま保険を検討すると、すでに持っている保障に二重にお金を払うことになります。
第一段:窓口3割負担|医療費はそもそも7割引き
公的医療保険により、現役世代の窓口負担は医療費の3割です。医療費が30万円かかっても、窓口で払うのは9万円。これが土台です。
第二段:高額療養費制度とは?|1ヶ月の自己負担に「上限」がある
高額療養費制度とは、1ヶ月(月の1日〜末日)の医療費の自己負担が一定の上限額を超えた場合、超えた分が健康保険から払い戻される制度のことです。2026年8月の診療分からは、年収約370万〜770万円の会社員の場合、上限額は次の式で計算されます。
例:1ヶ月の総医療費が100万円(窓口3割で30万円)かかった場合
85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%=85,800円+7,140円=92,940円
→ 30万円払っても、申請すれば約20.7万円が戻ってきます。
さらに、治療が長引いて直近12ヶ月に3回以上上限に達すると、4回目からは「多数回該当」という仕組みで上限が月44,400円まで下がります(年収約370万〜770万円の場合)。また、同じ健康保険に入っている家族(扶養に入っている配偶者やお子さんを含む)の医療費を同じ月の中で合算して上限を超えれば払い戻される「世帯合算」という仕組みもあり、家族の入院にもこの制度は効きます。制度の仕組みと2026年8月・2027年8月の2段階の変更点は、高額療養費制度は2026年8月からどう変わる?で年収別の早見表にまとめています。
第三段:傷病手当金とは?|働けない間も「給料の3分の2」が続く
傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなった会社員に、健康保険から給料のおよそ3分の2が通算1年6ヶ月支給される制度のことです。月給30万円の方なら1日あたり約6,667円、1ヶ月あたり約20万円。医療保険の議論で意外と忘れられがちですが、「治療費」よりも怖い「収入が止まるリスク」を、この制度がすでにカバーしています。ただし賞与は計算に入らないため、賞与の比重が大きい家計は注意が必要です。計算式と月給別早見表は傷病手当金はいくら・いつまでもらえる?で詳しく整理しています。
見落としがちな上乗せ:付加給付とは?|大企業の健保組合ならさらに手厚い
付加給付とは、健康保険組合が独自に上乗せしている払い戻し制度のことです。組合によっては「1ヶ月の自己負担は2万円まで。超えた分は組合が負担」といった手厚いルールを持っているところもあります。この場合、高額療養費の上限よりさらに低い金額で自己負担が止まるため、民間医療保険の必要性は大きく下がります。お勤め先の健保組合のホームページで「付加給付」「一部負担還元金」を検索してみてください。判定の前に、まずここを確認する価値があります。
公的保障の「外側」にあるもの:差額ベッド代とは?
差額ベッド代とは、少人数の部屋や個室に入院したときにかかる、公的保険の対象外の室料のことです(正式には「特別療養環境室料」)。高額療養費制度の上限計算にも入らないため、「公的保障ではカバーされない出費」の代表としてよく保険営業の資料に登場します。ただし、ここには知っておくべきルールがあります。差額ベッド代が発生するのは、原則として患者本人が同意書にサインして特別室を希望した場合です。病院側の都合(大部屋が満床など)で特別室に入る場合や、治療上の必要がある場合には、同意なしに請求されるべきものではないと厚生労働省の通知で示されています。「個室に入りたいから備える」のは価値観として立派な選択ですが、それはリスクへの備えではなく、快適さへの予算です。快適さの予算なら、保険ではなく貯蓄で持つほうが柔軟に使えます。
なお、1年間に払った医療費が10万円を超えた場合は、確定申告で医療費控除も使えます。手順は医療費控除を会社員がe-Taxで申請する方法にまとめています。
2026年8月の高額療養費引き上げで「いらない」の答えは変わるか
2026年8月の診療分から、高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられました。「公的保障が削られるなら、やっぱり医療保険が必要では?」——今年いちばん増えている相談がこれです。実際の増分を見てみましょう。
| 年収の目安 | 〜2026年7月 | 2026年8月〜 | 基本額の増分 | 年間上限(新設) |
|---|---|---|---|---|
| 約370万〜770万円 | 80,100円+1% | 85,800円+1% | +5,700円/月 | 53万円 |
| 約770万〜1,160万円 | 167,400円+1% | 179,100円+1% | +11,700円/月 | 111万円 |
| 〜約370万円(住民税課税) | 57,600円 | 61,500円 | +3,900円/月 | 53万円 |
40代会社員に多い年収約370万〜770万円の区分では、上限に達する月が来たときの負担増は月5,700円です。痛い変化ではありますが、同時に見てほしいのが右端の列です。今回の改正では「年間上限」が新設され、月々の上限に届かない月が続いても、1年間の自己負担の合計が53万円(年収約370万〜770万円の場合)に達したら、それ以上は負担しなくてよいことになりました。長期の治療に対するセーフティネットは、むしろ厚くなった面もあるのです。
では「最悪の1年」を数字にしてみます。年収500万円の会社員が、1年間ずっと上限額まで医療費を払い続けた場合——最初の3ヶ月は月85,800円、4ヶ月目からは多数回該当で月44,400円。合計すると85,800円×3ヶ月+44,400円×9ヶ月=約65.7万円、食事代・雑費を足しても約75万円です(年間上限の53万円が適用されるケースならさらに下がります)。これが、公的保障だけで立ち向かった場合の「ほぼ最悪の1年」の金額です。
つまり、上限は上がったものの「貯蓄で備えられる範囲かどうか」という判定の物差し自体は変わっていません。変わったのは必要な貯蓄額が少し増えたことです。なお2027年8月には第2弾として所得区分の細分化が予定されており、年収510万円以上の方は上限がもう一段上がります(年収650万〜770万円で+30,300円/月)。年収がこのゾーンの方は、来年もう一度この判定を見直すことをおすすめします。
医療保険がいらない人・いる人|「貯蓄100万円」で判定する3ステップ
材料が揃いました。ここからが本題の判定です。順番に3つ確認します。
ステップ1:いつでも取り崩せる貯蓄が100万円あるか
なぜ100万円なのか。根拠は2つです。①平均的な入院(自己負担18.7万円)なら5回分に相当する。②公的保障だけで立ち向かう「ほぼ最悪の1年」(約63〜75万円)をカバーできる。定期預金や普通預金など、ペナルティなしですぐ使えるお金で100万円——これが判定ラインです。NISAの投資信託は「売れば使える」お金ではありますが、暴落時に医療費のために売る事態は避けたいので、ここでは現金・預金で数えてください。いま届いていなくても大丈夫です。月3万円の先取り貯蓄なら、100万円には約3年で届きます。「3年後に保険を卒業する」という目標に変換すれば、この判定ラインは締め切りのある貯蓄計画になります。
ステップ2:働けない期間の生活費を傷病手当金でまかなえるか
月給30万円なら傷病手当金は月約20万円。ご家庭の毎月の生活費と比べてください。差額が小さければ、収入減リスクはほぼ制度でカバーされています。注意が必要なのは賞与の比重が大きい家計です。傷病手当金に賞与は反映されないため、「月給38万円+賞与年150万円」のような給与構成だと、想像より年100万円ほど少なくなります。この場合は保険よりもまず、賞与に頼らない家計への組み替えが先です。
ステップ3:例外リスクだけ個別に手当てする
貯蓄と公的保障でカバーしきれない例外が2つあります。1つは先進医療。重粒子線治療(約313万円)や陽子線治療(約266万円)は公的保険の対象外で、全額自費です。確率は低いものの金額が大きいため、ここだけは月100〜200円の先進医療特約で備える価値があります。考え方はがん保険は40代に必要か?で詳しく書きました。もう1つは働き方。自営業・フリーランスの方には傷病手当金がありません。同じ「医療保険いらない論」でも、会社員と自営業では前提がまったく違います。
| 判定 | 条件 | 考え方 |
|---|---|---|
| いらない可能性が高い | 会社員+いつでも使える貯蓄100万円以上+生活費を傷病手当金でまかなえる | 入院費用は貯蓄で自家保険。先進医療特約(月100〜200円)だけ検討 |
| 条件付きで必要 | 会社員だが貯蓄が100万円未満 | 掛け捨ての安い医療保険で「貯蓄が育つまでの時間」を買う。貯蓄100万円到達が解約の目安 |
| 必要性が高い | 自営業・フリーランス/賞与依存が大きい/持病で再加入が難しい | 傷病手当金がない分、就業不能への備えを含めて設計する |
大切なのは、「いらない」は絶対の結論ではなく、貯蓄が育つと変わっていく判定だということです。貯蓄30万円の家庭にとって医療保険は合理的な道具ですし、貯蓄300万円の家庭にとっては割高な安心料です。同じ商品でも、家計によって答えが変わります。
それでも不安なのはなぜか|保険を「安心料」で買ってしまう3つの心理
ここまでの数字を見ても、「理屈は分かったけれど、解約するのは怖い」と感じた方が多いはずです。私もそうでした。この「怖さ」には名前がついています。行動経済学で説明される3つの心理バイアスです。
①損失回避|「18.7万円の出費」は「120万円の保険料」より痛く感じる
人間は、得をする喜びより損をする痛みを2倍以上強く感じると言われます。入院して18.7万円を一度に払う場面を想像すると強い痛みを感じる一方、月4,000円の保険料は痛みをほとんど感じません。しかし月4,000円を65歳まで25年間払うと、合計は120万円。冷静に並べれば、どちらの「損」が大きいかは明らかなのに、支払いが小分けになっているだけで感覚が逆転してしまうのです。
②利用可能性ヒューリスティック|目立つ話ほど「起きやすい」と錯覚する
利用可能性ヒューリスティックとは、思い出しやすい出来事ほど起きる確率を高く見積もってしまう心理のことです。テレビやSNSで流れてくるのは、長期闘病や高額治療の話です。「2週間で退院して、高額療養費で18万円で済みました」という大多数の体験談は、誰も発信しません。目立つ話だけを材料に確率を見積もると、備えは必ず過剰になります。
③現状維持バイアス|「入っている安心」を手放せない
いま入っている保険を解約するのは、新しく保険に入るより心理的なハードルが高いものです。「解約した直後に限って病気になる気がする」——この感覚には統計的な根拠はありませんが、誰の心にも住んでいます。対策はひとつ。不安を「気持ち」のまま扱わず、金額に変換することです。「もし来月入院したら、いくら払う?」の答えが「上限85,800円×数ヶ月、最悪の1年で約75万円」と言えるようになれば、不安は「貯蓄でまかなえるか」という計算問題に変わります。計算問題になれば、答えは出ます。
FP実例|月1.2万円の医療保険を見直した、2つの家庭の答え
実際の見直しがどう進むか、2つの実例を紹介します。※個人が特定されないよう、複数の実例を組み合わせて再構成しています。
夫婦で月1.2万円(年14.4万円)の医療保険に15年加入。判定3ステップを確認したところ、①いつでも使える預金450万円 ②傷病手当金で生活費の9割をカバー可能 ③勤務先の健保組合に月2万円で止まる付加給付あり——と、三重に守られていることが分かりました。夫婦の医療保険は解約し、先進医療特約つきの掛け捨てがん保険(月1,000円台)だけ残す形に。浮いた月1万円は、そのまま新NISAの積立増額に回しました。「15年間、すでに持っている保障に二重に払っていたと分かったのが一番の衝撃だった」とのことでした。
同じ月1.2万円の保険料でも、こちらのご家庭は貯蓄80万円と判定ラインの手前。しかも賞与の比重が大きい給与構成で、傷病手当金だけでは月の生活費に約5万円の不足が出る計算でした。この場合、ゼロにするのは早い。日額1万円型を5,000円型に減額して月2,000円台の掛け捨てに切り替え、差額の約1万円を先取り貯蓄へ。貯蓄が100万円を超えた時点で改めて解約を検討する、と「卒業の条件」を決めました。保険をやめることではなく、保険を卒業できる家計を作ることがゴールです。
2つの実例の違いは、収入でも年齢でもなく貯蓄額と給与構成です。同じ保険・同じ保険料でも、判定基準に当てはめると正反対の答えが出る。だからこそ「みんなどうしてる?」ではなく、ご自身の数字で判定する必要があるのです。
浮いた保険料はどこへ行くか|25年間の試算とインフレの話
医療保険を卒業した場合、浮いた保険料はどうなるでしょうか。月4,000円を25年間で試算します。
| 選択肢 | 25年後 | 備考 |
|---|---|---|
| 医療保険を払い続ける | 払込総額120万円 | 掛け捨ての場合、入院しなければ戻りは0円 |
| 預金に積み立てる | 約120万円 | そのまま「医療費の予備」になる。使わなければ老後資金 |
| 新NISAで積み立てる(年5%想定) | 約238万円 | 元本割れのリスクあり。医療費予備の貯蓄100万円を確保したうえでの選択肢 |
月4,000円×12ヶ月×25年=120万円。同じ120万円でも、掛け捨て保険なら「使わなければ消えるお金」、貯蓄なら「使わなければ残るお金」です。ここに、年5%で運用できた場合の複利を加えると約238万円になります(あくまで想定利回りであり、保証はありません)。
「保険料控除で節税になるからお得」は本当か
医療保険を続ける理由として「生命保険料控除で税金が安くなるから」という声もよく聞きます。これも金額に変換してみましょう。医療保険の保険料は「介護医療保険料控除」の対象で、所得税で最大4万円・住民税で最大2.8万円の所得控除になります。所得控除とは、税金そのものが安くなるのではなく「税率を掛ける前の所得から差し引かれる」仕組みのことです。所得税率10%の方(年収500万円前後の会社員に多い層)なら、軽くなる税金は所得税4,000円+住民税2,800円で年6,800円ほど。月4,000円・年4.8万円の保険料を払って年6,800円戻る計算であり、節税は「入る理由」にはなりますが「入り続ける理由」としては小さすぎる金額です。控除は保険の必要性を判定したあとの、おまけとして考えてください。
もうひとつ、長期の判断で見落とせないのがインフレです。インフレとは、物価が上がってお金の価値が下がることです。日銀は物価上昇率2%を目標にしており、仮に年2%のインフレが20年続くと物価は約1.49倍になります。ここで医療保険の弱点が見えてきます。「入院日額5,000円」という保障は、契約したときの金額のまま固定されるのです。20年後の物価で見れば、日額5,000円の実質的な価値は今の3,400円ほどに目減りします。一方、公的医療保険の高額療養費制度は賃金や物価の水準を踏まえて見直される仕組みであり、貯蓄や積立投資は金額そのものを増やしていけます。「今の保障額で30年後まで安心」とは言えない——これは保険営業の場ではあまり語られない論点です。

パパ
保険で備えるか、貯蓄で備えるか。どちらも「万一に備える」目的は同じなんだ。違いは、使わなかったときに手元に残るかどうか。だから貯蓄が育つほど、保険の役目は小さくなっていくんだよ。
なお、生命保険(死亡保障)まで含めた保険料全体の見直し方は生命保険を半分に減らした40代パパの見直し術で書いています。医療保険とあわせて点検すると、年20万円単位の改善余地が見つかることも珍しくありません。
まとめ|今日やる3つのアクションとよくある質問
最後に、この記事の判定基準を行動に落とします。今日やることは3つだけです。
- 勤務先の健保組合の「付加給付」を調べる:「勤務先の健康保険組合名+付加給付」で検索(例:「◯◯健康保険組合 付加給付」)。見つからなければ「一部負担還元金」でも探せます。月2万円前後で自己負担が止まる組合なら、判定は大きく「いらない」側に傾きます
- いつでも取り崩せる貯蓄の残高を確認する:普通預金・定期預金の合計が100万円を超えているか。超えていれば自家保険の土台は完成しています
- 保険証券を1枚の表にする:契約中の医療保険の「月額保険料・入院日額・払込満了年齢」を書き出す。月額×12×残り年数=これから払う総額を計算し、「最悪の1年・約75万円」と並べて眺めてください
Q1. 結局、入院したら平均でいくらかかるのですか?
2025年度の調査では、高額療養費制度を使った後の自己負担は平均18.7万円です(食事代・差額ベッド代・交通費等を含む)。入院日数の平均は16.0日で、74.5%の人は14日以内に退院しています。
Q2. 解約する前に注意することはありますか?
2つあります。①いったん解約すると、その後に持病ができた場合、同じ条件で再加入するのは難しくなります。解約は「貯蓄100万円」の判定を満たしてから。②入院や通院の予定・自覚症状がある状態での解約は避けてください。迷う場合は、減額(日額を下げる)という中間の選択肢もあります。
関連して、持病がある方向けの「引受基準緩和型」という医療保険にも触れておきます。引受基準緩和型とは、健康状態の告知項目を減らして持病があっても入りやすくした保険のことですが、その分、保険料は通常の医療保険より割高に設定されるのが一般的です(商品により異なります。倍近い水準になるものもあるため、必ず通常型の保険料と並べて比較してください)。「持病があるからこそ保険」と考えたくなりますが、割高な保険料を長く払うより、同じ金額を医療費の予備として貯蓄する方が合理的なケースも多い領域です。ここは金額の比較を紙に書いてから決めることを強くおすすめします。
Q3. 貯蓄がまだ100万円ない40代はどうすればいいですか?
掛け捨ての安い医療保険(月2,000円前後)で当面の穴をふさぎながら、浮いたお金で先取り貯蓄を進めてください。保険は「貯蓄が育つまでの時間を買う道具」と割り切るのがコツです。貯蓄100万円に到達した日が、保険を卒業する日の候補になります。
医療保険の判定は、がん保険とセットで考えると迷いが減ります。がん保険は40代に必要か?もあわせてご覧ください。
家計がいちばん苦しかった時期の私は、月1万円を超える医療保険を「お守り」として握りしめていました。
20代でギャンブルの負債を抱えていた頃、貯蓄はほとんどゼロでした。それなのに医療保険だけは手放せなかった。いま思えば理由は単純で、貯蓄がない人間にとって、保険は「不安を月払いにできる唯一の道具」だったからです。あの頃の私にとって、保険に入っていること自体が心の支えでした。
家計を立て直し、FPの勉強で高額療養費制度や傷病手当金の仕組みを知ったとき、最初に感じたのは悔しさでした。こんなに手厚い保障に、私はずっと保険料を払いながら加入していたのに、その中身を一度も調べたことがなかった。不安の正体を調べもせず、不安ごとお金で外注していたのです。貯蓄が育ち、保険を「卒業」した日、家計から消えたのは保険料だけではありませんでした。「何かあったらどうしよう」と月末のたびに感じていた、あのざわざわも一緒に消えたのです。
この記事を閉じたら、まず健保組合のホームページで「付加給付」を検索してみてください。5分で終わります。その5分が、毎月の保険料と、保険料では買えなかった安心の両方を連れてくるかもしれません。
あなたとご家族が、お金の不安から自由になりますように。それがこのブログを書き続けている、たった一つの理由です。
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免責事項
本記事は2026年8月時点の公表情報(厚生労働省・生命保険文化センター等の公式情報)に基づいて執筆しています。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨・勧誘・募集を目的とするものではありません。また、保険の解約・減額・加入の判断は、健康状態・家計状況・勤務先の制度など個別の事情により最適な答えが異なります。統計値は調査時点の平均であり、個々のケースの医療費・自己負担額を示すものではありません。記事中の運用試算は一定の想定利回りに基づく概算であり、将来の成果を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては、加入中の保険会社・勤務先の健康保険組合・協会けんぽ、またはファイナンシャルプランナー等の専門家に必ずご確認ください。
出典・参考資料
- 生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査《速報版》」 https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r7/seikatuhoshouchousa_2025sokuhouban.pdf
- 厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(社会保障審議会医療保険部会 資料) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r306/
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額な医療費を支払ったとき」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/


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