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結論:2026年度(令和8年度)の最低賃金は、55円引き上げられ、全国平均で1,176円になる見込みです。ただし実際に上がるのは10月以降で、あなたの住む県がいつから上がるかは、県によって最大で半年ほどずれます。そしてもう一つ、見落としやすい変化があります。この引き上げによって、2026年10月に「106万円の壁」が撤廃されるのです。
「最低賃金が上がる」というニュースは、毎年7月末に流れます。けれど40代の会社員にとって本当に効いてくるのは、自分の給料ではなく配偶者のパート時給と、子どものアルバイト代のほうです。時給が上がるのはうれしいことなのに、「扶養から外れてしまうかも」「働く時間を減らさないといけないかも」と、なぜか身構えてしまう。その正体を、この記事で分解します。

ママ
ニュースで「最低賃金が上がる」って言ってたけど、うちのパートの時給って、いつから上がるのかしら。10月からって聞いたような気がするけど。

パパ
そこが実はややこしいところなんだ。10月に上がる県もあるけれど、年明けや3月まで上がらない県もある。去年は同じ年度の改定なのに、県によって発効日が半年近くずれたんだよ。それから、もっと大事な話がある。時給が上がったせいで、来年10月に「106万円の壁」がなくなるんだ。
2026年度の最低賃金はいくら上がる?結論は「全国平均で1,176円」
2026年7月28日、国の審議会(中央最低賃金審議会)が2026年度の引き上げの目安を答申しました。この目安は全国一律ではありません。都道府県を経済の実態に応じてA・B・Cの3つのランクに分け、ランクごとの金額で示されます。
| ランク | 2026年度の目安 | 対象の都道府県 |
|---|---|---|
| A | +54円 | 埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪(6都府県) |
| B | +56円 | 北海道・宮城・福島・茨城など28道府県 |
| C | +56円 | 青森・岩手・秋田・山形・鳥取・高知など13県 |
この目安どおりに全都道府県で引き上げられた場合、全国加重平均は今の1,121円から1,176円になります。上昇額は55円、引き上げ率は4.9%です。昨年度は66円・6.3%でしたから、上げ幅そのものは前の年より小さくなりました。
今年の目安は「都市部より地方のほうが大きい」
この表で最初に気づいてほしいのは、東京・大阪などのAランクが+54円なのに対し、BランクとCランクは+56円という点です。つまり時給が高い都市部より、地方のほうが引き上げ額が大きいのです。
金額の差はたった2円です。それ自体は小さい。けれど向きが変わっていることのほうが大事です。あとで詳しく触れますが、2026年7月に閣議決定された骨太方針には「地域間格差の是正を図る」と明記されています。都市部と地方の時給差を、これ以上広げない方向に舵が切られているということです。
そして、ここからが実務的に重要な話です。今回の答申に添えられた小委員会の報告には、昨年度もCランクの目安がA・Bを上回ったこと、そして実際にはCランクの県で目安を大幅に超える引き上げが相次いだことが書かれています。つまり地方の実額は、目安よりさらに上振れする可能性があるということです。地方にお住まいなら、「+56円」を下限のイメージで見ておくほうが実態に近いかもしれません。
ここで大事なのは、「目安」と「実際の金額」は別物だということです。国の審議会が7月に示すのは、あくまで各都道府県が参考にする「目安」です。実際の金額は、8月に各都道府県の審議会が地域の実情を踏まえて決めます。
前の年度(令和7年度)を見ると、その差がよく分かります。国が示した目安は63円でしたが、実際に決まった全国加重平均の引き上げ額は66円(引き上げ率6.3%)でした。つまり実際の金額は、目安を上回ることがあるのです。最低賃金は1,055円から1,121円になりました。
2026年度の目安が決まるまで|金額は労使の合意に至りませんでした
2026年度の目安を決める国の審議会(中央最低賃金審議会の目安に関する小委員会)は、6月26日から審議を始め、7月10日・7月17日・7月23日・7月27日と回を重ねました。労働者側は現在の全国平均を75円引き上げるよう求め、これは過去最大だった前年度の目安(63円)を大きく上回る要求でした。一方の経営者側は、原材料費の高騰などで中小企業の経営環境が厳しいとして、支払い能力を慎重に見極めるよう求めました。7月23日の第4回では結論が出ずに持ち越され、7月27日・28日と審議が続いた末、7月28日の第6回でようやく目安が示されました。ただし答申には「その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった」と記されています。労使が合意した金額ではなく、公益委員(学識経験者)の見解として各都道府県の審議会に示される形になりました。
背景には政策目標があります。2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」(いわゆる骨太方針)には、「遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」と書かれています。
今年の目安どおりなら全国平均は1,176円ですから、1,500円まではあと324円です。仮に2032年度に達成するとしたら、2027年度からの6年間で1年あたり54円ずつ上げる計算になります(2031年度に前倒しなら年65円、2033年度なら年46円)。今年の55円は、ちょうどこのペースの真ん中です。
つまり「今年は去年より上げ幅が小さかった」のは事実です。それでも目標から逆算すれば、年50円前後の引き上げはこれから何年も続きます。一度きりの出来事ではなく、毎年やってくる前提で家計を考えておくのが現実的です。

パパ
つまり、今年いくら上がるかを心配するより、これから毎年上がり続ける前提で家計を設計するほうが実用的なんだ。「今年は壁を越えないように調整できた」で終わらせると、来年また同じ計算をやり直すことになる。
決まり方の流れ|7月に目安、8月に県ごとの金額、10月以降に発効
最低賃金が上がるまでには、決まった順番があります。ニュースで「上がる」と報じられた時点では、まだ自分の県の金額は決まっていません。
- 7月:国の審議会(中央最低賃金審議会)が引き上げ額の「目安」を答申する
- 8月:各都道府県の審議会(地方最低賃金審議会)が、目安を参考にその県の金額を審議する
- 9月ごろ:各県の労働局が改定額を公表する
- 10月以降:県ごとに定められた発効日から、新しい最低賃金が適用される
ですから、7月末のニュースを見て「うちの時給は来月から○○円だ」と考えるのは早すぎます。自分の県の金額が分かるのは9月ごろ、実際に上がるのは早くて10月です。
自分の県はいくら?いつから?|47都道府県の一覧
次の表は、①今の最低賃金(令和7年度改定後)②あなたの県のランク③今年の目安額④目安どおりなら10月以降にいくらになるかをまとめたものです。まずご自分の県の行を見てください。
| 都道府県 | 今の額 | ランク | 今年の目安 | 目安どおりなら | 前回の発効日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,075円 | B | +56円 | 1,131円 | 令和7年10月4日 |
| 青森 | 1,029円 | C | +56円 | 1,085円 | 令和7年11月21日 |
| 岩手 | 1,031円 | C | +56円 | 1,087円 | 令和7年12月1日 |
| 宮城 | 1,038円 | B | +56円 | 1,094円 | 令和7年10月4日 |
| 秋田 | 1,031円 | C | +56円 | 1,087円 | 令和8年3月31日 |
| 山形 | 1,032円 | C | +56円 | 1,088円 | 令和7年12月23日 |
| 福島 | 1,033円 | B | +56円 | 1,089円 | 令和8年1月1日 |
| 茨城 | 1,074円 | B | +56円 | 1,130円 | 令和7年10月12日 |
| 栃木 | 1,068円 | B | +56円 | 1,124円 | 令和7年10月1日 |
| 群馬 | 1,063円 | B | +56円 | 1,119円 | 令和8年3月1日 |
| 埼玉 | 1,141円 | A | +54円 | 1,195円 | 令和7年11月1日 |
| 千葉 | 1,140円 | A | +54円 | 1,194円 | 令和7年10月3日 |
| 東京 | 1,226円 | A | +54円 | 1,280円 | 令和7年10月3日 |
| 神奈川 | 1,225円 | A | +54円 | 1,279円 | 令和7年10月4日 |
| 新潟 | 1,050円 | B | +56円 | 1,106円 | 令和7年10月2日 |
| 富山 | 1,062円 | B | +56円 | 1,118円 | 令和7年10月12日 |
| 石川 | 1,054円 | B | +56円 | 1,110円 | 令和7年10月8日 |
| 福井 | 1,053円 | B | +56円 | 1,109円 | 令和7年10月8日 |
| 山梨 | 1,052円 | B | +56円 | 1,108円 | 令和7年12月1日 |
| 長野 | 1,061円 | B | +56円 | 1,117円 | 令和7年10月3日 |
| 岐阜 | 1,065円 | B | +56円 | 1,121円 | 令和7年10月18日 |
| 静岡 | 1,097円 | B | +56円 | 1,153円 | 令和7年11月1日 |
| 愛知 | 1,140円 | A | +54円 | 1,194円 | 令和7年10月18日 |
| 三重 | 1,087円 | B | +56円 | 1,143円 | 令和7年11月21日 |
| 滋賀 | 1,080円 | B | +56円 | 1,136円 | 令和7年10月5日 |
| 京都 | 1,122円 | B | +56円 | 1,178円 | 令和7年11月21日 |
| 大阪 | 1,177円 | A | +54円 | 1,231円 | 令和7年10月16日 |
| 兵庫 | 1,116円 | B | +56円 | 1,172円 | 令和7年10月4日 |
| 奈良 | 1,051円 | B | +56円 | 1,107円 | 令和7年11月16日 |
| 和歌山 | 1,045円 | B | +56円 | 1,101円 | 令和7年11月1日 |
| 鳥取 | 1,030円 | C | +56円 | 1,086円 | 令和7年10月4日 |
| 島根 | 1,033円 | B | +56円 | 1,089円 | 令和7年11月17日 |
| 岡山 | 1,047円 | B | +56円 | 1,103円 | 令和7年12月1日 |
| 広島 | 1,085円 | B | +56円 | 1,141円 | 令和7年11月1日 |
| 山口 | 1,043円 | B | +56円 | 1,099円 | 令和7年10月16日 |
| 徳島 | 1,046円 | B | +56円 | 1,102円 | 令和8年1月1日 |
| 香川 | 1,036円 | B | +56円 | 1,092円 | 令和7年10月18日 |
| 愛媛 | 1,033円 | B | +56円 | 1,089円 | 令和7年12月1日 |
| 高知 | 1,023円 | C | +56円 | 1,079円 | 令和7年12月1日 |
| 福岡 | 1,057円 | B | +56円 | 1,113円 | 令和7年11月16日 |
| 佐賀 | 1,030円 | C | +56円 | 1,086円 | 令和7年11月21日 |
| 長崎 | 1,031円 | C | +56円 | 1,087円 | 令和7年12月1日 |
| 熊本 | 1,034円 | C | +56円 | 1,090円 | 令和8年1月1日 |
| 大分 | 1,035円 | C | +56円 | 1,091円 | 令和8年1月1日 |
| 宮崎 | 1,023円 | C | +56円 | 1,079円 | 令和7年11月16日 |
| 鹿児島 | 1,026円 | C | +56円 | 1,082円 | 令和7年11月1日 |
| 沖縄 | 1,023円 | C | +56円 | 1,079円 | 令和7年12月1日 |
| 全国加重平均 | 1,121円 | — | +55円 | 1,176円 | — |
「10月1日から上がる」は、多くの県で正しくありません
この表でぜひ見ていただきたいのは、いちばん右の発効日の列です。令和7年度の改定では、栃木県が10月1日といちばん早く、いちばん遅い秋田県は令和8年3月31日でした。同じ年度の改定なのに、県によって発効日が半年近く違うのです。
数えてみると、10月中に上がったのは47都道府県のうち20県だけです。11月が13県、12月が8県、そして年が明けてから上がった県が6県ありました(福島・徳島・熊本・大分が令和8年1月1日、群馬が3月1日、秋田が3月31日)。
表を見ていくと、ひとつの傾向が見えます。引き上げ額が大きい県ほど、発効日が遅いのです。引き上げ額が最も大きかった熊本(+82円)・大分(+81円)は令和8年1月1日、秋田(+80円)は令和8年3月31日。一方、引き上げ額が63円だった東京は令和7年10月3日、大阪は10月16日でした。賃上げの幅が大きいほど、企業側の準備に時間が必要になるという事情がうかがえます。
この「地方のほうが引き上げ額が大きい」という動きは、偶然ではありません。先ほどの骨太方針2026には、「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」とはっきり書かれています。都市部と地方の差を縮めていくことが、国の方針として示されているのです。いま金額が低い県ほど、これからの引き上げ幅は大きくなりやすいと考えておくとよいでしょう。
発効日が遅いと、家計にはどう効くのか
発効日が遅いことには、二つの意味があります。
- 時給が上がるのが遅れる:年間の収入で見ると、上がった月数の分しか増えません。12月発効なら、その年度に効くのは実質4か月分です
- 年収の見通しが立てやすい:扶養の範囲で働きたい場合、上がるのが遅いほうが「今年の年収」は読みやすくなります
つまり発効日は、損得というより「いつから計算をやり直すか」の起点です。自分の県の発効日は、お住まいの都道府県労働局のお知らせで確認できます。

ママ
去年、10月になっても時給が変わらないから「うちの会社、上げてくれないの?」って思っていたけれど、そもそも県の発効日が11月だったのね。勘違いして損した気になっていたわ。
なぜ「106万円の壁」は撤廃されるのか|壁を壊したのは最低賃金
ここからが、この記事のいちばん大事なところです。2026年10月に、いわゆる「106万円の壁」が撤廃されます。そして、その撤廃の理由が「最低賃金が上がったから」なのです。
「106万円の壁」とは?|正体は月8.8万円という条件
パートやアルバイトで働く人が、自分で社会保険(健康保険・厚生年金)に入ることになる条件は、いま次の四つです。
- 所定内賃金が月8.8万円以上であること(賃金要件)
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 勤め先の従業員数が51人以上であること(企業規模要件)
- 学生ではないこと
この①「月8.8万円」を年収に換算すると約106万円になります。これが「106万円の壁」と呼ばれてきたものの正体です。年収106万円という基準がどこかに書かれているわけではなく、月8.8万円という条件を12か月分に換算した通称にすぎません。
時給1,016円が分かれ目だった
厚生労働省の資料は、この賃金要件を撤廃する理由をはっきり書いています。「最低賃金の上昇により、週20時間以上働く方は、自動的に社会保険の加入要件を満たすため、賃金要件を意識する必要がなくなります」——資料の見出しそのものです。
計算してみると、その意味がはっきりします。分かれ目は時給1,016円です。
- 時給1,016円 × 週20時間 × 52週 ÷ 12か月 = 約88,053円 → 8.8万円を超える
- 時給1,015円 × 週20時間 × 52週 ÷ 12か月 = 約87,967円 → 8.8万円に届かない
つまり時給が1,016円以上なら、週20時間働くだけで自動的に月8.8万円を超えるのです。そして令和7年度の改定で、全都道府県の最低賃金が1,016円を超えました(いちばん低い高知県・宮崎県・沖縄県でも1,023円)。
その結果、①の賃金要件は「②週20時間以上」を満たせば自動的にクリアされる条件になり、判定基準として意味を失いました。だから撤廃されるのです。「106万円の壁」は制度が譲ったのではなく、最低賃金の上昇が壁を追い越して無効にした——これが今回の構図です。
撤廃されたあとに世帯の手取りと配偶者の年金がどう変わるかは、年収120万円・150万円・200万円・220万円の4パターンで計算した106万の壁 撤廃とは?2026年10月から配偶者の社会保険・手取り・年金はどう変わるかで詳しく整理しています。この記事は「なぜ壁が消えたのか」という上流の話に集中します。
次に来るのは「週20時間の壁」|時給が上がると、働ける時間が減る
賃金要件が撤廃されると、判定の軸は金額から時間へ移ります。ここに、最低賃金の引き上げがもたらす二つ目の変化があります。
まず「週20時間」を体で分かる形にしておきます。1日4時間を週5日。午前中だけ働く形が、ちょうどこの線です。3時間勤務なら週6日でも18時間で線の内側、5時間勤務なら週4日で20時間に届きます。ご自身の勤務時間を、この形に当てはめてみてください。
週20時間働くと、年収はもう106万円を超えている
いまの最低賃金で週20時間働くと、年収はいくらになるでしょうか。
| 時給 | 週20時間の月収 | 年収の目安 | 月8.8万円を超えるか |
|---|---|---|---|
| 高知・宮崎・沖縄(全国で最も低い) 1,023円 |
約88,660円 | 約106.4万円 | 超える |
| 全国加重平均 1,121円 |
約97,153円 | 約116.6万円 | 超える |
| 大阪 1,177円 |
約102,007円 | 約122.4万円 | 超える |
| 東京(全国で最も高い) 1,226円 |
約106,253円 | 約127.5万円 | 超える |
いちばん低い時給帯でも年収は約106万円、東京なら約127万円です。「106万円を超えないように」という調整は、週20時間働く前提ではもう成立しません。時給が上がったぶん、同じ時間でも年収は自動的に上がっていきます。
月8.8万円に届く時間は、年々短くなっている
逆から見ると、こうなります。
| 時給 | 月8.8万円に届く労働時間 | 週あたり |
|---|---|---|
| 1,023円 | 月86.0時間 | 週19.9時間 |
| 1,121円 | 月78.5時間 | 週18.1時間 |
| 1,177円 | 月74.8時間 | 週17.3時間 |
| 1,226円 | 月71.8時間 | 週16.6時間 |
時給1,023円なら月86.0時間(週19.9時間)働けば8.8万円に届きますが、東京の1,226円なら月71.8時間(週16.6時間)で届きます。時給が上がるほど、同じ収入に届くまでの時間は短くなる。これは働く側にとって効率が良くなったということですが、同時に「収入を抑えたいなら、働く時間をさらに削らなければならない」ことも意味します。
「130万円の壁」は、もうほとんど管理できない
配偶者の健康保険の扶養に入れるかどうかの基準として、年収130万円(いわゆる130万円の壁)がよく語られます。では、年収130万円に収めるには週何時間まで働けるのか。計算するとこうなります。
| 時給 | 年収130万円に届く年間労働時間 | 週あたり | 週20時間未満に収まるか |
|---|---|---|---|
| 1,023円 | 年約1,271時間 | 週約24.4時間 | 収まらない |
| 1,121円 | 年約1,160時間 | 週約22.3時間 | 収まらない |
| 1,177円 | 年約1,105時間 | 週約21.2時間 | 収まらない |
| 1,226円 | 年約1,060時間 | 週約20.4時間 | 収まらない |
どの時給帯でも、年収130万円をめざすと週20時間を超えます。そして週20時間を超えれば(従業員51人以上の会社なら)社会保険に加入することになります。逆に週20時間未満に抑えると、年収は時給1,023円で約104万円、東京の1,226円でも約124万円が上限で、130万円には届きません(週19.5時間で計算)。
つまり従業員51人以上の会社で働くなら、130万円という数字を管理する意味は、ほぼ消えたということです。130万円に届く前に「週20時間」で社会保険に入るからです。管理すべき対象は、年収ではなく週の労働時間に変わりました。
130万円の壁が残るのはどこか
ただし、130万円の壁が完全に消えるわけではありません。次の場合には、まだ意味を持ちます。
- 従業員50人以下の会社で働いている場合(企業規模要件を満たさないため社会保険の対象外)
- 週20時間未満で働いている場合(複数の仕事を掛け持ちして合計130万円に近づくケースなど)
- 学生としてアルバイトしている場合(子どものバイトはここに該当します)

ママ
じゃあ私、いままで「年収がいくらか」ばかり気にしていたけれど、本当は週に何時間働いているかを見ないといけなかったのね。シフトの相談のとき、金額の話しかしていなかったわ。

パパ
そう。しかも会社の従業員数によって答えが変わる。だから確認するのは三つ。時給・週の時間・職場の従業員数だよ。この三つが分かれば、自分の家がどの制度に当たるかは判断できる。
企業規模要件の時刻表|51人 → 36人 → 21人 → 11人 → 10人以下
「うちは小さい会社だから関係ない」——いまはそうかもしれません。ただし企業規模要件は、これから段階的に縮小されて最終的に撤廃されます。年金制度改正法に基づく予定は次のとおりです。
| 時期 | 社会保険の対象になる企業の規模 |
|---|---|
| 現在 | 従業員51人以上 |
| 2027年(令和9年)10月から | 従業員36人以上 |
| 2029年(令和11年)10月から | 従業員21人以上 |
| 2032年(令和14年)10月から | 従業員11人以上 |
| 2035年(令和17年)10月から | 従業員10人以下も対象 |
つまり2035年10月には、従業員数にかかわらず、週20時間以上働く人は社会保険の対象になる予定です。40代の私たちにとっては、配偶者が働き続ける期間のなかで確実に順番が回ってくる話です。「いまは対象外」は「ずっと対象外」ではありません。
保険料が軽くなる支援措置もあります
新たに社会保険の対象になる短時間労働者のうち、標準報酬月額が12.6万円以下である人については、3年間にわたって保険料の負担を軽減する措置が実施されます。また企業規模要件を満たさない会社でも、従業員の2分の1以上の同意があれば任意で加入できます。任意加入で事業主が短時間労働者の保険料の一部を負担する場合には、3年間の制度的な支援(保険料調整制度)を受けられます。
社会保険に入ることは、負担が増えるだけの話ではありません。病気やけがで働けなくなったときの傷病手当金が使えるようになり、医療費が高額になったときの高額療養費制度も自分の保険から受けられます。将来の老齢年金も厚生年金の分だけ増えます。保険料は「取られるお金」ではなく「保障と年金を買うお金」という見方が、判断をすこし楽にします。
時給が上がったのに、なぜ得した気がしないのか|40代夫婦の心理
最低賃金が上がるのは、家計にとって良いニュースです。それでも多くの家庭が身構えます。この違和感には、いくつか理由があります。
理由1|増えた分が見えないうちに、引かれる分が増える
時給が上がっても、社会保険料や住民税、子ども・子育て支援金といった天引きが同時に増えていきます。手取りは「増えた分」から「引かれた分」を差し引いた残りなので、時給が上がった実感より、手取りの伸びが小さく感じられるのです。2026年6月に住民税が上がったように見えた理由は住民税が2026年6月から上がった理由で、2026年から始まった天引きの正体は子ども・子育て支援金はいくら?で整理しています。
理由2|去年の年収を基準に考えてしまう(アンカリング)
人は、判断のときに最初に見た数字を基準にしがちです。「去年は120万円だったから、今年も120万円くらいで」と考えると、時給が上がったぶんだけ働ける時間を削るという結論になります。けれど基準にすべきなのは去年の年収ではなく、今年の時給で、自分がどの制度に当たるかです。
理由3|保険料は「今の損」、年金は「先の得」に見える
社会保険料は毎月の給料からすぐ引かれますが、厚生年金が増える効果は何十年も先に受け取ります。人は目の前の損失を、将来の利益より大きく感じます(損失回避)。そのため「保険料を払うくらいなら働く時間を減らす」という判断に傾きやすいのです。判断するときは、目の前の保険料と、将来受け取る年金の増加額を同じ紙の上に並べることが大切です。
理由4|就業調整が「毎年の見直し」ではなく「習慣」になっている
いちばん見落とされやすいのがこれです。最低賃金は毎年上がり、社会保険の要件も数年ごとに変わります。それなのに働き方の設計は、一度決めたら数年そのままになりがちです。制度が毎年動くのだから、設計も毎年見直す前提に切り替える——これが今回いちばんお伝えしたいことです。

パパ
「壁を越えないように」って毎年ギリギリで調整するのは、けっこう疲れる作業なんだ。越えない設計と、越えて増やす設計のどちらが自分の家に合うかを一度決めてしまうと、毎年の判断がぐっと楽になるよ。
FP実例|田中家(40代夫婦)の3つの選択
ここからは、私がご相談を受けた内容をもとに、個人が特定されないよう数字と設定を変えた例で整理します。田中家は夫が40代の会社員、妻が週22時間のパート(時給1,150円・従業員80人の会社)という設定です。妻の年収はおおよそ131万円(1,150円×22時間×52週)で、すでに週20時間を超えています。
選択A|週19時間台に抑えて、社会保険に入らない
週の時間を20時間未満(19.5時間)に抑えると、年収は約117万円になります。社会保険料の負担はありませんが、年収は約15万円下がり、厚生年金も増えません。また来年また最低賃金が上がれば、同じ年収を守るには時間をさらに削ることになります。子どもの受験や親の介護など、時間そのものが必要な時期には合理的な選択です。
選択B|そのまま働き、社会保険に入る
週22時間のまま働くと、社会保険に加入します。毎月の保険料が引かれるので手取りはいったん減りますが、傷病手当金などの保障が付き、将来の厚生年金が増えます。標準報酬月額が12.6万円以下なら、3年間の保険料軽減措置の対象になる可能性があります。「手取りの一時的な減少」と「保障と年金の増加」を並べて判断する場面です。
選択C|時間を増やして、手取りを取り戻す
社会保険に入るなら、中途半端な時間で止めずに時間を増やすほうが手取りは戻ります。週30時間まで増やせば年収は約179万円になり、保険料を払っても手取りは選択Aより明確に増えます。具体的な世帯手取りの比較は106万の壁 撤廃の記事で年収別に計算しているので、そちらで確かめてください。

ママ
私はずっとAだと思い込んでいたけれど、子どもの手が離れる時期なら、Cのほうが将来の年金まで含めて得になるのね。毎年ギリギリを狙う暮らしから抜けられるのは、気持ちの面でも大きいわ。
夫(正社員)の給料には波及するのか|期待と現実
「最低賃金が上がるなら、自分の給料も上がるのでは」と考えたくなります。ここは冷静に見ておきたいところです。
最低賃金は時間あたりの賃金の下限を定めるものです。月給制の正社員で、時間あたりに換算した賃金が下限を上回っている場合、最低賃金の改定が直接その給料を引き上げるわけではありません。一方で、次のような間接的な影響は指摘されています。
- 賃金の階段が詰まる:パートや新入社員の時給が上がると、中堅層との差が縮まり、いずれ全体の見直しが必要になります
- 原資の取り合いになりうる:中小企業では、賃上げに使えるお金のうち最低賃金への対応が優先され、中堅層の昇給に回る分が薄くなる可能性があります
どちらに転ぶかは会社の状況によって違うため、断定はできません。確かなのは、「最低賃金が上がるから自分の給料も上がるはず」と見込んで家計を組むのは危険だということです。
物価上昇を差し引いて考える
もう一つ、忘れてはいけない視点があります。賃金が上がっても、物の値段が同じだけ上がっていれば、買えるものの量は変わりません。前の年度の引き上げ率は6.3%でしたが、その間に食料品などの値段も上がっています。「名目」(金額)が増えても、「実質」(買える量)が増えたとは限らないのです。
ラーメンの値段で考えると分かりやすいです。時給が1,055円から1,121円に上がっても、ラーメンが900円から957円になっていれば、1時間働いて食べられる杯数はほとんど変わりません。だからこそ、時給の上昇分をそのまま生活費の増加に吸わせず、増えた分の一部を貯蓄や投資に回して物価上昇に対抗する設計が要ります。
まとめ|今週やる3つのこと
2026年度の最低賃金は55円引き上げられ、全国平均で1,176円になる見込みです。上がるのは10月以降で、県によって発効日は最大半年ほどずれます。そしてこの引き上げの積み重ねが、2026年10月の「106万円の壁」撤廃をもたらしました。判定の軸は金額から週20時間という時間に移り、企業規模要件も2035年10月までに撤廃されていきます。
40代の私たちが、今週できる3つのことはシンプルです。
- 自分の県の現在の金額と発効日を確認する:上の47都道府県の表で確認できます。2026年度の改定額は9月ごろに公表されます
- 配偶者の「週の労働時間」を確認する:年収ではなく時間です。20時間を超えているかどうかが分かれ目になります
- 勤め先の従業員数を確認する:51人以上かどうかで結論が変わります。調べ方は、勤務先に「社会保険の適用拡大の対象事業所ですか」と聞くのがいちばん確実です。数えるのは厚生年金保険の被保険者数なので、パート本人が見た人数とは違うことがあります。会社のホームページの会社概要でも目安はつきます。50人以下でも、2027年10月以降は順次対象が広がります
この3つが分かれば、「うちはどの制度に当たるのか」がはっきりします。そのうえで、越えない設計か、越えて増やす設計かを一度決めてしまう。それだけで、毎年の7月末のニュースに身構えなくて済むようになります。
壁を越えたあとの世帯手取りと年金を数字で確かめたい方は106万の壁 撤廃とは?を、税金側の壁(基礎控除62万円・178万円の壁)が気になる方は年末調整2026年の変更点もあわせてご覧ください。
「時給が上がった」と妻が言ったとき、私が最初に口にしたのは「扶養、大丈夫なの」でした。あの一言を、私はいまでも悔いています。
20代の私は、ギャンブルで作った負債を抱えて生きていました。毎月の返済に追われ、収入が増えても手元に残らない。そういう暮らしをしていた人間は、お金の話になると反射的に「損しないこと」から考えるようになります。妻が働いて時給が上がった、という素直に喜ぶべき報告に対して、私は喜ぶ前に守りの計算を始めてしまったのです。
家計を立て直し、FPの勉強で制度の仕組みを知るほどに、「壁を越えないように調整する」という考え方が、実は毎年やり直しになる終わりのない作業だと分かってきました。最低賃金は毎年上がります。要件も数年ごとに変わります。だとすれば、越えないように縮み続けるのではなく、どこかで「越えて増やす」に切り替える判断のほうが、家族の時間と気持ちを守ってくれます。制度を調べる作業は、損得の計算ではなく、家族がこれからどう働きたいかを話し合うための材料集めなのだと、いまはそう思っています。
この記事を閉じたら、まず配偶者の「週の労働時間」と勤め先の従業員数を確認してみてください。そして次にシフトの話をするとき、「何時間まで働ける?」ではなく「これからどう働きたい?」と聞いてみてください。その一言が、毎年の調整に追われる暮らしから抜け出す最初の一歩になります。
あなたとご家族が、お金の不安から自由になりますように。それがこのブログを書き続けている、たった一つの理由です。
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免責事項
本記事は2026年7月時点の公表情報(厚生労働省・日本年金機構の公式情報等)に基づいて執筆しています。2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金額および発効日は、各都道府県の地方最低賃金審議会の審議を経て決定・公示されるため、本記事の記載後に変更される場合があります。社会保険の加入要件の判定は、所定労働時間・所定内賃金・勤務先の被保険者数・雇用契約の内容など個別の事情により異なります。本記事の計算例は所定内賃金のみを用いた機械的な概算であり、残業代・通勤手当・賞与等は含めていません。実際の適用可否・保険料額を保証するものではありません。個別の判断は、勤務先の担当部署、年金事務所、健康保険組合、都道府県労働局または社会保険労務士等の専門家に必ずご確認ください。
出典・参考資料
- 厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金全国一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
- 厚生労働省「中央最低賃金審議会(目安に関する小委員会)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-tingin_127941.html
- 厚生労働省「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」(令和8年1月作成) https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001633788.pdf
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/2026_basicpolicies_ja.pdf
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(令和8年7月28日答申) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html


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