※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。本記事の制度・数値はすべて厚生労働省の公開資料を出典としており、広告の有無によって内容を変えることはありません。
結論:先に確かめるのは、自分の会社にマッチング拠出があるかどうかです。あれば、マッチング拠出とiDeCoはどちらか一方しか選べません。両方やることはできません。
2026年は確定拠出年金が2回変わります。4月はもう終わっていて、12月が本番です。4月に「マッチング拠出は事業主の掛金を超えてはいけない」という制限がなくなり、12月に掛金の上限が上がって、70歳まで加入できるようになります。

会社の説明会で「企業型DC」って聞いたけど、iDeCoとは別物なの?両方やったほうが得なんじゃないの?

別物だよ。そして両方は、できない場合がある。会社がマッチング拠出という仕組みを入れていて、そこに自分でお金を出していると、iDeCoには入れない。厚生労働省のQ&Aに「本人が選択できる」と書いてある。つまり、どちらかを選ぶ話なんだ。
12月の改正は「2026年12月1日施行予定」と公表されている内容です。実際の掛金変更の手続きや反映時期は、お勤め先と運営管理機関によって異なります。
結論|2026年は2回変わる。先に確かめるのは「会社にマッチング拠出があるか」
話を複雑にしているのは、改正が1回ではなく2回あることです。整理すると次のとおりです。
| 施行日 | 変わること | 誰に効くか |
|---|---|---|
| 2026年4月1日(施行済み) | 企業型DCのマッチング拠出で、加入者掛金が事業主掛金を超えてはならないという制限を撤廃 | マッチング拠出のある会社の人 |
| 2026年12月1日(施行予定) | iDeCo・企業型DC・国民年金基金の拠出限度額の引き上げ | ほぼ全員 |
| 2026年12月1日(施行予定) | iDeCoの加入可能年齢の引き上げ(60歳以上70歳未満の区分を新設) | 60代で働き続ける人 |
そのうえで、会社員が最初にやることは1つです。
- 自分の会社に企業型DCがあるかを確かめる(給与明細か、入社時の年金資料か、社内ポータル)
- あるなら、マッチング拠出の制度があるかを確かめる
- あるなら、自分がいま加入者掛金を出しているかを確かめる
この3つで、あなたの答えが決まります
| あなたの状況 | 選べるもの | 12月にやること |
|---|---|---|
| 会社に企業型DCがない | iDeCoのみ | 掛金の変更手続き(上限が月6.2万円へ) |
| 企業型DCがあり、マッチング拠出がない | iDeCo(企業型DCと併用) | 引き算で自分の枠を出してから変更手続き |
| マッチング拠出があり、出していない | マッチング拠出か iDeCo のどちらか | 手数料と商品で選んでから手続き |
| マッチング拠出があり、出している | マッチング拠出のみ | 会社の規約で上限を確認して増額を検討 |
3つ目が「出している」なら、いまのあなたはiDeCoに入れません。逆に「出していない」なら、iDeCoに入ることができます。ここを確かめずに記事を読み進めても、答えは出ません。
企業型DCとiDeCoは何が違う?|出す人が違う、それだけです
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは?
会社が制度を用意し、会社がお金(事業主掛金)を出して、運用する商品は従業員が自分で選ぶ年金制度です。将来の受取額は運用成績で変わります。会社に制度がなければ、そもそも入れません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?
自分でお金を出して、自分で運用する年金制度です。金融機関(運営管理機関)を自分で選び、口座を自分で開きます。掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から引かれるため、所得税と住民税が軽くなります。
マッチング拠出とは?
企業型DCに、従業員が自分のお金を上乗せして出す仕組みです。会社が「マッチング拠出あり」の制度を用意している場合だけ使えます。このとき従業員が出すお金を加入者掛金といいます。
確定給付企業年金(DB)とは何が違う?
会社の年金にはもう1つ、確定給付企業年金(DB)があります。混同しやすいので並べます。
| 確定給付企業年金(DB) | 企業型DC | |
|---|---|---|
| 受取額 | あらかじめ決まっている | 運用成績で変わる |
| 運用する人 | 会社・基金 | 従業員本人 |
| 運用がうまくいかなかったら | 会社が不足分を埋める | 受取額が減る |
| iDeCoの枠への影響 | 他制度掛金相当額として枠を使う | 事業主掛金が枠を使う |
名前が似ていて、性質は正反対です。DBは会社が約束した額をくれる制度、DCは自分で運用して結果を引き受ける制度です。どちらがあるかで、iDeCoに回せる枠が変わります。
自分の会社に企業型DCがあるか、どこで分かる?
「よく分からない」で止まる人がもっとも多いところです。確認できる場所は4つあります。
| 確認する場所 | 見るところ | 分かること |
|---|---|---|
| 給与明細 | 控除欄・会社負担欄 | マッチング拠出に加入者掛金を出していれば、天引きの項目が載ります |
| 入社時の年金資料 | 「確定拠出年金」「企業型年金規約」の冊子 | 制度の有無とマッチング拠出の有無 |
| 運営管理機関からの通知 | 毎年届く「お取引状況のお知らせ」 | 自分の口座があるか、事業主掛金がいくらか |
| 人事・総務 | 直接聞く | いちばん速い。聞くのは「マッチング拠出をやっていますか」の一言 |
給与明細に加入者掛金の天引きがあれば、あなたはマッチング拠出をしています。その場合、いまのままではiDeCoに加入できません。
事業主掛金とは?
会社が企業型DCに出してくれるお金です。金額は会社の規約で決まっており、役職や勤続年数で差がある会社もあれば、全員一律の会社もあります。この金額が、あとで出てくる判断の分かれ目になります。
2026年4月に終わったこと|マッチング拠出の「事業主掛金を超えてはならない」が撤廃された
これまでのマッチング拠出には、きつい縛りがありました。厚生労働省の説明をそのまま引くと、「マッチング拠出における加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えてはならないという制限」です。
つまり、会社が月5,000円しか出していなければ、自分も月5,000円までしか出せなかったということです。枠が余っていても使えませんでした。
2026年4月1日、この制限が撤廃されました。厚生労働省は撤廃の理由を「事業主掛金の額によらずに、加入者がそれぞれの状況に応じ拠出限度額の枠を十分に活用し老後の資産所得の確保が可能となるよう」と説明しています。
これまで:マッチング拠出は月5,000円まで。合計は月10,000円。
2026年4月から:事業主掛金を超えて出せます。拠出限度額の枠まで使えます。
※実際に出せる上限は、会社の規約と拠出限度額の両方で決まります。会社が規約を変えていない場合は、制度上できても会社の手続きが追いついていないことがあります。
会社の規約が改定済みかを確かめる
法律が変わっても、会社の規約が追いついていなければ使えません。企業型DCの掛金のルールは、各社の「企業型年金規約」で定められているためです。
- 人事・総務に「マッチング拠出の上限の規約は改定済みですか」と聞く
- 改定済みなら、自分の加入者掛金をいくらまで出せるかを確認する
- 未改定なら、いつ改定予定かを聞く(12月の限度額引き上げに合わせる会社もあります)
ここを飛ばして運営管理機関のサイトで手続きしようとすると、選べる金額が思ったより小さくて止まることになります。制度は変わっていても、会社の設定は会社が変えるまで変わりません。
この改正は、マッチング拠出の魅力を大きく引き上げました。これまで「会社の掛金が少ないからマッチングは使えない。だからiDeCo」と考えていた人は、前提が変わっています。
2026年12月に変わること|iDeCoの上限が月6.2万円になる
12月1日施行予定の改正で、拠出限度額が引き上げられます。厚生労働省の資料にある見直し後の金額は次のとおりです。
| 加入者の区分 | いまの上限(月額) | 2026年12月からの上限(月額) | 増える額 |
|---|---|---|---|
| 第1号加入者・第4号加入者 (自営業・フリーランス等) | iDeCo・国民年金基金等 合計で6.8万円 | 合計で7.5万円 | +0.7万円 |
| 第2号加入者(企業年金あり) 会社に企業型DCや確定給付企業年金がある会社員 | iDeCo・企業年金等 合計で5.5万円 (うちiDeCoは2.0万円まで) | 合計で6.2万円 (iDeCo部分の2.0万円の枠は撤廃) | 最大+4.2万円 |
| 第2号加入者(企業年金なし) 会社に企業年金がない会社員 | iDeCo 2.3万円 | 6.2万円 | +3.9万円 |
| 第3号加入者 (会社員等に扶養されている配偶者) | iDeCo 2.3万円 | 6.2万円 | +3.9万円 |
| 第5号加入者(新設) 60歳以上70歳未満 | — | 6.2万円 | 新設 |
会社員にとっていちばん大きいのは、企業年金がない会社の人が月2.3万円から6.2万円になることです。年に直すと27.6万円から74.4万円。使える枠が約2.7倍になります。
企業年金がある会社の人は、合計の上限が5.5万円から6.2万円へ0.7万円増えるだけに見えます。ところが「iDeCoは2.0万円まで」という内枠が撤廃されるため、会社の掛金が少ない人ほど、自分で出せる額が大きく増えます。最大で4.2万円の増加です。
企業型DC側の枠はどうなるのか
タイトルに企業型DCを掲げている以上、こちらにも触れておきます。厚生労働省の資料で「第2号加入者(企業年金あり)」の欄にある「iDeCo・企業年金等 合計で月5.5万円 → 合計で月6.2万円」という数字が、まさに企業型DCを含めた枠の話です。
つまり会社が出す事業主掛金と、自分が出す掛金(マッチング拠出またはiDeCo)は、同じ6.2万円の枠を分け合います。会社がたくさん出してくれる会社ほど、自分で出せる余地は小さくなります。逆に会社の掛金が少ない会社ほど、自分の裁量が大きいということです。
この枠の考え方が、第6章の判断に直結します。「会社の掛金が少ないから損」ではありません。少ないぶん自分で埋められる枠が大きい、という読み方に変わったのが2026年の改正です。
自分がいくら出せるかは、3つの引き算で出る
企業年金がある会社の人は、上限の計算に手順が要ります。順番はこうです。
- 枠の全体=月6.2万円(2026年12月から)
- 引く①=会社が出している事業主掛金(通知書または給与明細で分かります)
- 引く②=確定給付企業年金などがある場合の他制度掛金相当額(会社から通知されます)
残った額が、あなたが自分で出せる上限です。そしてその上限の中で、マッチング拠出に出すか、iDeCoに出すかを選びます。両方に分けて出すことはできません。
6.2万円 − 1.5万円 = 月4.7万円が自分で出せる上限。
これまでは「iDeCoは2.0万円まで」の内枠があったため、iDeCoに出せるのは月2.0万円まででした。
2026年12月からはその内枠が無くなるので、iDeCoに月4.7万円まで出せる計算になります。
※実際に出せる額は会社の規約と運営管理機関の設定によります。必ずご自身の通知書でご確認ください。
企業年金が無い会社の人は、引き算が要らない
会社に企業型DCも確定給付企業年金も無い場合、引くものがありません。月6.2万円がそのまま上限です。いまの月2.3万円から見ると、年間で27.6万円から74.4万円へ、46.8万円ぶん枠が増えます。
この層は、そもそもマッチング拠出という選択肢がありません。iDeCo一択なので、12月にやることは「掛金の変更手続き」だけです。判断に悩む必要がないぶん、いちばん素直に効きます。

2.3万円が6.2万円って、そんなに出せないと思うんだけど……。

枠が増えるだけで、出す義務はないよ。月1万円のままでも構わない。大事なのは上限に余裕ができたこと。教育費が終わった後や、収入が上がった時に、手続きだけで積立額を増やせる状態になる。枠は、使わなくても持っていることに意味があるんだ。
いちばん大事な分岐|マッチング拠出とiDeCoは「どちらか」。併用はできません
ここが本記事の芯です。厚生労働省の確定拠出年金Q&A(2026年10月1日現在)に、はっきり書かれています。
マッチング拠出を導入している企業型DCの加入者は、本人が加入者掛金を拠出していない場合、個人型DCには加入することは可能か。
厚生労働省「確定拠出年金Q&A」No.71-32(根拠:確定拠出年金法第3条第3項第7号の2)
→ 加入者掛金を拠出していない場合は個人型DCに加入することは可能。企業型DCの加入者掛金を拠出するのか、個人型DCに加入するかは本人が選択できる。
読み替えるとこうなります。
- マッチング拠出にお金を出している人 → iDeCoには入れない
- マッチング拠出の制度はあるがお金を出していない人 → iDeCoに入れる
- そもそも会社にマッチング拠出の制度がない人 → iDeCoに入れる
つまり「併用できます」という説明は、半分しか正しくありません。企業型DCとiDeCoの併用はできますが、マッチング拠出とiDeCoの併用はできないのです。この2つを混ぜて書いている記事が多く、読者が自分の可否を判断できなくなっています。
なぜ両方はできないのか
制度の設計として、自分で出せる枠は1人につき1つにまとめられているためです。マッチング拠出もiDeCoも「本人が自分のお金を出す」という同じ性質のもので、どちらにも同じ所得控除が付きます。両方を使えてしまうと、同じ性質の枠を二重に持つことになります。
だから厚生労働省のQ&Aも、「どちらが有利か」ではなく「本人が選択できる」という書き方をしています。制度としてはどちらでもよく、選ぶのは本人だ、という立て付けです。
混同しやすい3つの組み合わせを並べる
| 組み合わせ | 可否 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 企業型DC(会社の掛金のみ)+ iDeCo | できる | 2022年10月以降、原則として併用が可能です |
| マッチング拠出(自分で出す)+ iDeCo | できない | 確定拠出年金Q&A No.71-32。どちらかを本人が選択します |
| マッチング拠出の制度はあるが出していない + iDeCo | できる | 同Q&A「加入者掛金を拠出していない場合は個人型DCに加入することは可能」 |
表の1行目と2行目を混ぜて読むと、必ず間違えます。判定の鍵は「会社が出しているか」ではなく「自分が出しているか」です。
どちらを選ぶか|会社の掛金が少ない人ほど、判断が変わりました
2026年4月にマッチング拠出の制限が撤廃されたことで、この判断は従来と変わっています。比べる軸は3つです。
| 比べる軸 | マッチング拠出 | iDeCo |
|---|---|---|
| 口座の管理手数料 | 会社が負担することが多い(会社の規約による) | 自分が負担する(金融機関により異なる) |
| 商品の選択肢 | 会社が選んだ運用商品の中から選ぶ | 金融機関を自分で選べる(商品も選択肢が広い) |
| 手続き | 会社の窓口で完結・給与天引き | 自分で口座を開き、事業主の証明書が要る場合がある |
そのうえで、判断の目安を3つに整理しました。
- 手数料を重く見るなら、まずマッチング拠出。口座管理手数料を会社が持ってくれるなら、同じ金額を出しても手元に残る額が増えます。2026年4月の撤廃で、会社の掛金が少なくても枠いっぱいまで出せるようになりました。
- 商品の中身に不満があるならiDeCo。企業型DCのラインナップに低コストのインデックスファンドが無い会社は、いまもあります。信託報酬の差は長期では無視できません。
- 会社にマッチング拠出の制度がなければ、迷う必要はありません。iDeCo一択です。このケースが、会社員ではもっとも多いと見ています。
事業主掛金の額から引く判定表
2026年4月の制限撤廃を織り込んだ、当ブログの判定表です。あくまで目安として使ってください。
| あなたの状況 | 2026年3月まで | 2026年4月以降 | 変わったか |
|---|---|---|---|
| マッチング拠出の制度がない | iDeCo一択 | iDeCo一択 | 変わらず |
| 事業主掛金が多い(枠の半分以上) | マッチングが有利なことが多い | マッチングが有利なことが多い | 変わらず |
| 事業主掛金が少ない(月5千円〜1万円程度) | マッチングは同額までで使いにくい→iDeCo | マッチングでも枠いっぱい出せる→手数料で選ぶ | 変わった |
| 企業型DCの商品に低コストの投資信託がない | iDeCo | iDeCo | 変わらず |
今回の改正で判断が変わったのは3行目だけです。事業主掛金が少ない会社にお勤めで、過去に「マッチングは使えない」と結論した方は、もう一度だけ確かめ直す価値があります。
iDeCoにすると決めたら、金融機関は何で比べるか
運営管理機関(金融機関)は自分で選びます。比べる観点は3つだけで足ります。
- 口座管理手数料=毎月かかります。無料のところと有料のところがあり、20年なら差が積み上がります
- 運用商品のラインナップ=低コストのインデックスファンド(信託報酬の低いもの)があるか
- 問い合わせ窓口=コールセンターの受付時間。手続きで必ず一度は電話することになります
この3つを各社の公式サイトで見比べれば、30分で決まります。一度決めたら、原則としてそのまま長く使うものなので、最初だけ時間をかける価値があります。移換(金融機関の変更)はできますが、手数料と時間がかかります。
どちらを選んでも掛金が全額所得控除になる点は同じです。税のメリットで差はつきません。差がつくのは手数料と商品です。
60歳からの話|2026年12月から70歳まで加入できるようになる
いまのiDeCoは、原則として国民年金の被保険者であることが加入の条件です。そのため、60歳を過ぎて国民年金の被保険者でなくなると、掛金を出し続けられなくなります。
2026年12月1日施行予定の改正で、60歳以上70歳未満の人にも加入と拠出の継続が認められます。厚生労働省が挙げている要件は次のとおりです。
- 次の①〜③のいずれかに該当すること=①iDeCo加入者 ②iDeCo運用指図者 ③企業年金からiDeCoに資産を移換する者
- 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないこと
- マッチング拠出を実施していないこと
さらに経過措置があります。施行日から3年を経過する日までの間は、①〜③に該当しない60歳以上70歳未満の人でも加入できます。60代で「これまでiDeCoを使っていなかった」人にも、3年間だけ入口が開くということです。
これまでは国民年金の被保険者でなくなった時点で拠出が止まりました。
2026年12月以降は、要件を満たせば70歳まで拠出を続けられます。
月6.2万円の枠を8年間使えば、拠出総額は595.2万円(6.2万円×12か月×8年)。
※受給開始の年齢や退職所得控除との関係は人により異なります。受け取り方は別途ご確認ください。
3年の経過措置を使うときに気をつけること
経過措置は「施行日から3年を経過する日まで」の期限つきです。使うなら順番があります。
- 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていないかを確認する(受け取っていると加入できません)
- マッチング拠出をしていないかを確認する(していると加入できません)
- 加入までに時間がかかることを見込む(口座開設と事業主の証明が要る場合があります)
厚生労働省の資料には「施行日までに老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給した場合は加入不可」と注記されています。受給を始める前に判断する必要がある、ということです。なお、老齢基礎年金を繰り下げて老齢厚生年金を受給する人は加入可能とも明記されています。
受け取り方の設計は別の論点です。iDeCoと会社の退職金の受け取り時期が近いと税金の扱いが変わるため、iDeCoとNISAどっちが先?も合わせてご覧ください。
税金はいくら軽くなるか|掛金は全額が所得控除になります
iDeCoもマッチング拠出も、出した掛金は全額が所得控除になります。その年の所得税と、翌年度の住民税が軽くなります。
どれくらい軽くなるかは、その人の税率で決まります。所得税は課税所得に応じた累進税率、住民税は所得割がおおむね10%です。合計の税率を使って、当ブログで試算したのが次の表です。
| 課税所得の目安 | 所得税+住民税の合計税率 | 月2.3万円(年27.6万円)を出した場合 | 月6.2万円(年74.4万円)を出した場合 |
|---|---|---|---|
| 195万円未満(1,949,000円以下) | 15% | 約4.14万円 | 約11.16万円 |
| 195万円以上330万円未満 | 20% | 約5.52万円 | 約14.88万円 |
| 330万円以上695万円未満 | 30% | 約8.28万円 | 約22.32万円 |
| 695万円以上900万円未満 | 33% | 約9.11万円 | 約24.55万円 |
40代の会社員で多いのは、課税所得330万円以上695万円未満の合計税率30%の層です。この層が月6.2万円まで出すと、1年で約22.3万円の軽減になります。いまの上限の月2.3万円なら約8.3万円ですから、差は約14万円です。
自分の税率はどこで分かる?
表の「課税所得」は年収ではありません。年収から給与所得控除や各種の所得控除を引いたあとの金額です。推測せずに、手元の書類で確かめられます。
- 源泉徴収票を出す(12月〜1月に会社から配られます)
- 「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引く。これが課税所得のおおよその額です
- その金額を上の表に当てはめて、合計税率を読む
この引き算さえすれば、自分の軽減額は自分で出せます。年収だけで判断すると、扶養の人数や保険料の額によって大きくずれます。
出口の税金|受け取るときに何が起きるか
入口(拠出)で軽くなった分は、出口(受取)で精算されます。受け取り方は2つです。
- 一時金で受け取る=退職所得として扱われ、退職所得控除が使えます
- 年金形式で受け取る=雑所得として扱われ、公的年金等控除が使えます
会社員で問題になりやすいのは、会社の退職金と受け取る時期が近いときです。退職所得控除は、近い年に2回受け取ると重ねて使えない仕組みになっています。
| 受け取る順番 | 退職所得控除が重ならない年数の目安 |
|---|---|
| iDeCo等の一時金が先 → 会社の退職金が後 | 前年以前9年(令和8年分から) |
| 会社の退職金が先 → iDeCo等の一時金が後 | 前年以前19年 |
この2行は向きが逆です。「◯年ルール」とだけ覚えると必ず間違えます。40代のいま決める話ではありませんが、60歳以降の受け取り方は早めに設計しておくほど選択肢が残ります。
インフレを考えると|枠が増えたことの意味は「今より将来」
掛金の上限は、制度が変えない限り金額のまま固定されます。月6.2万円は、10年後も20年後も月6.2万円です。一方で物価は動きます。物価が上がる局面では、同じ6.2万円で買えるものは年々減っていきます。
| 経過年数 | 名目の年間掛金 | 物価が年2%上がった場合の実質価値(当ブログ算出) |
|---|---|---|
| 1年目 | 74.4万円 | 74.4万円 |
| 5年目 | 74.4万円 | 約68.7万円 |
| 10年目 | 74.4万円 | 約62.3万円 |
| 20年目 | 74.4万円 | 約51.1万円 |
ここから出てくる結論は2つです。
- 枠が増えた「いま」に動く価値が大きい。同じ6.2万円でも、早い年のほうが実質的な重みがあります。12月の改正を待って、その月のうちに掛金の変更手続きをするだけで、1年分の差がつきます。
- 預金のままで置かない。物価が上がる局面では、現金の価値は目減りします。枠を増やしても中身を定期預金にしていては、インフレに対しては守れません。ただし元本確保型を選ぶこと自体が間違いではなく、何年後に使うお金かで決める話です。
40代が動けない4つの理由|制度ではなく気持ちの問題です
①「会社の制度がよく分からない」で止まる
企業型DCの資料は、入社時に一度配られたきりという会社が珍しくありません。分からないまま放置すると、マッチング拠出があるのに使っていない状態が何年も続きます。確かめ先は人事か総務です。聞くのは1つだけ、「うちの会社はマッチング拠出をやっていますか」。
②「60歳まで引き出せない」が怖い
これは正しい理解です。iDeCoも企業型DCも、原則として60歳まで引き出せません。だからこそ生活防衛資金を先に作ってから始めるのが順番です。手元のお金をいくら残すかは生活防衛資金は何ヶ月分?で整理しています。
③「どうせ少額だから」と見送る
月1万円でも、合計税率30%なら1年で3.6万円の軽減です。10年で36万円。手取りを3.6万円増やすのは簡単ではありません。金額の大小ではなく、手続きが1回で済むかで考えてください。掛金の変更は、年に1回の見直しで十分です。
④「手続きが面倒そう」で先延ばしになる
実際にやることは多くありません。マッチング拠出なら会社に申し出るだけ、iDeCoなら金融機関で口座を開くだけです。面倒に見えるのは、どちらを選ぶかが決まっていないからです。
選ぶ基準は、この記事の第6章に整理したとおり手数料と商品の2つだけです。そして会社にマッチング拠出が無ければ、選ぶ必要すらありません。最初の一言を人事に聞けば、面倒の半分は消えます。
FP実例|現場で見かける4つのつまずき
いずれも相談内容を匿名化し、数字をモデルに置き換えたものです。
原因は、企業型DCとiDeCoの併用(可)と、マッチング拠出とiDeCoの併用(不可)を混同していたこと。
先に確かめるのは制度の有無ではなく、自分が加入者掛金を出しているかどうか。
2026年4月にこの制限は撤廃されているため、現在は事業主掛金を超えて出せる。
ただし会社の規約が追いついていない場合があるため、人事に「規約は改定済みか」を確認したうえで手続きした。
12月から上限が6.2万円になることを知らなかった。
変更回数の制限は運営管理機関によって異なる。12月の改正に合わせたいなら、先に「年に何回まで変更できるか」を確認してから手続きする。
自動移換の間は運用されず、手数料だけが引かれ続ける。本人は通知を見落としていた。
気づいたのは、転職から3年後に「お取引状況のお知らせ」が届かないことを不審に思ったため。
2026年4月からは、資格を喪失することが見込まれるときに事業主が説明する義務に変わったので、これから退職する人は会社から説明を受けられる。
12月に間に合わせるための逆算
12月1日に枠が広がっても、手続きをしなければ掛金は増えません。逆算すると、やることの順番はこうなります。
| 時期 | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 10〜11月 | 会社にマッチング拠出があるか、自分が出しているかを確認 | 人事に聞くのが最短。資料探しで止まらない |
| 11月 | どちらを使うかを決める(手数料と商品で判断) | 会社の規約が改定済みかの確認を忘れない |
| 11月 | 掛金の変更が年に何回できるかを運営管理機関に確認 | 年1回の会社だと、ここが実質の期限 |
| 12月以降 | 変更手続きを出す | 反映までに1〜2か月かかることがある |
とくに3行目が落とし穴です。掛金の変更回数に制限がある場合、11月に動かしてしまうと12月の改正に合わせられません。先に「何回変更できるか」を確かめてから手続きしてください。
今日やる3つのアクション
- 会社に企業型DCがあるかを確かめる。給与明細か入社時の年金資料、なければ人事・総務へ(5分)。
- マッチング拠出の制度があるか、自分が出しているかを確かめる。出しているならiDeCoは選べません(5分)。
- 掛金の変更が年に何回できるかを確認する。12月の改正に合わせるなら、ここが期限になります(5分)。
最後に、この記事でいちばん伝えたいことをもう一度だけ書きます。制度は、知っている人にだけ届きます。2026年4月の制限撤廃は、すでに半年前に起きた出来事です。それでも「会社の掛金と同額までしか出せない」と思ったままの人が、いま現在もたくさんいます。12月の引き上げも同じ道をたどります。自動では何も起きません。
逆にいえば、確かめた人だけが先に動けます。聞くのは一言、調べるのは15分。それで月2.3万円の枠が月6.2万円になるかどうかが決まります。40代の残り時間で考えれば、この15分の差は小さくありません。

最後に1つだけ。12月に枠が広がっても、自動では増えません。自分で手続きをした人だけが使えます。まずは「うちの会社はマッチング拠出をやっていますか」の一言から始めてください。
よくある質問
Q|企業型DCとiDeCoは併用できますか?
できます。ただしマッチング拠出に加入者掛金を出している場合は、iDeCoに加入できません。厚生労働省の確定拠出年金Q&Aは「企業型DCの加入者掛金を拠出するのか、個人型DCに加入するかは本人が選択できる」としています。
Q|12月になったら自動で掛金が増えますか?
増えません。上限が上がるだけで、掛金を増やすには自分で変更手続きが必要です。手続きの方法と反映時期は運営管理機関によって異なります。
Q|いまiDeCoに入っています。12月を待ったほうがいいですか?
待つ必要はありません。いまの上限の範囲で始め、12月以降に増やす判断をすれば十分です。始める時期を遅らせるほど、所得控除を受けられる年数が減ります。
Q|マッチング拠出からiDeCoに乗り換えられますか?
加入者掛金の拠出をやめれば、iDeCoに加入できます。ただしマッチング拠出をやめる手続きの回数やタイミングは会社の規約で決まっています。人事・総務に確認してください。すでに積み立てた企業型DCの資産は、そのまま運用を続けられます。
Q|60歳を過ぎてから始めても意味はありますか?
2026年12月1日施行予定の改正で、要件を満たせば70歳まで加入・拠出できるようになります。さらに施行日から3年を経過する日までは、要件に該当しない60歳以上70歳未満の人も加入できる経過措置があります。ただし老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していると加入できません。
Q|転職したら企業型DCの資産はどうなりますか?
転職先に企業型DCがあればそちらへ、無ければiDeCoへ移すのが基本です。手続きをしないまま6か月が過ぎると自動移換となり、運用されないまま手数料が引かれ続けます。なお2026年4月から、資格を喪失することが見込まれるときに事業主が説明する義務に変わりました。退職前に会社から説明を受けられるようになっています。
Q|マッチング拠出とiDeCo、税のメリットに差はありますか?
ありません。どちらも掛金の全額が所得控除になります。差がつくのは口座管理手数料を誰が負担するかと選べる運用商品の2点です。このため「税金で有利なほう」という選び方は成り立ちません。
Q|企業年金がある会社だと、上限はいくらですか?
2026年12月からは企業年金等と合計して月6.2万円が上限です。これまであった「iDeCoは月2.0万円まで」という内枠は撤廃されます。自分がいくら出せるかは会社の事業主掛金の額によって変わるため、会社から通知される掛金額を確認してください。
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私がこの記事を書いたのは、「併用できます」の一行で止まってしまう人を見てきたからです。
企業型DCとiDeCoは併用できます。けれどマッチング拠出とiDeCoは併用できません。この2つは字面が似ているのに、答えが正反対です。厚生労働省のQ&Aを開くまで、私もはっきりとは説明できませんでした。
そして制度は、知らない人の分だけ静かに損をさせます。会社の掛金が月5,000円だからとマッチング拠出を諦めていた方は、その制限がもう無くなっていることを知りません。12月に枠が広がっても、手続きをした人にしか届きません。
この記事を閉じたら、人事か総務に一言だけ聞いてください。「うちの会社はマッチング拠出をやっていますか」。それだけで、あなたの選択肢が決まります。
あなたとご家族が、お金の不安から自由になりますように。それがこのブログを書き続けている、たった一つの理由です。
※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。制度・数値はすべて厚生労働省の公開資料を出典としており、広告の有無によって内容を変えることはありません。
免責事項
本記事は、更新時点(2026年10月6日)の厚生労働省「2025年の制度改正」ページ、同省資料「iDeCo拠出限度額の引き上げ」「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」「私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール」および「確定拠出年金Q&A」(2026年10月1日現在)をもとに、40代の会社員が一般向けに整理したものです。2026年12月1日施行分は「施行予定」として公表されている内容であり、今後変更される可能性があります。マッチング拠出の有無、事業主掛金の額、規約の改定状況、掛金の変更可能な回数は、お勤め先と運営管理機関によって異なります。ご自身が実際にいくら拠出できるか、どちらを選べるかは、必ずお勤め先の人事・総務、および運営管理機関にご確認ください。本記事は個別の投資助言・税務相談ではありません。税の軽減額およびインフレの試算はいずれも考え方を示すためのモデルであり、復興特別所得税を考慮していません。実際の税額は各種控除により異なります。本記事は特定の金融商品・サービスの推奨を行うものではありません。

