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結論:傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった会社員の生活費を支える健康保険の給付で、金額の目安は「給料のおよそ3分の2」、期間は「通算1年6ヶ月」です。月給30万円の方なら1日あたり約6,667円・1ヶ月あたり約20万円。ただし賞与(ボーナス)は計算に含まれないため、「年収の3分の2」ではない点に注意が必要です。
「もし自分が倒れたら、うちの家計は何ヶ月もつのか」——40代になると、この問いは他人事ではなくなります。同世代の休職の話を聞くことも増えてきます。この記事では、協会けんぽ・厚生労働省の一次情報をもとに、①いくらもらえるのか(月給別早見表)②いつまでもらえるのか③もらうための条件④手取りが想像より減る理由⑤申請の流れと退職時の落とし穴——を、FP2級を持つ40代会社員の私の視点で整理します。
お隣のご主人、体調を崩して半年お仕事を休んでいるんですって。もしパパが働けなくなったら、うちはお給料ゼロになるの?住宅ローンも教育費もあるのに……。
ゼロにはならないよ。会社員には「傷病手当金」があって、給料のおよそ3分の2が最長で通算1年6ヶ月支給される。ただし賞与は計算に入らないし、休職中も社会保険料や住民税の支払いは続く。「実際にいくら残るのか」まで数えておくのが家計の備えなんだ。
「自分の月給だといくら?」をすぐ知りたい方は、記事前半の月給別早見表へどうぞ。この記事を読むと、次のことが分かります。
- 傷病手当金とは何か(誰が使えて、誰が使えないのか)
- 月給別にいくらもらえるのか(計算式と早見表)
- いつまでもらえるのか(2022年改正の「通算1年6ヶ月」の意味)
- もらうための4つの条件と「待期3日間」の数え方
- 手取りが「3分の2」より少なく感じる3つの理由
- 申請の流れと、退職するときに絶対に知っておきたいルール
傷病手当金とは?3分でわかる制度の全体像
傷病手当金とは?|働けない間の生活費を支える健康保険の給付
傷病手当金とは、業務外の病気やケガの療養のために働けなくなったとき、その間の生活費を支えるために健康保険から支給されるお金のことです。毎月の給与から天引きされている健康保険料には、病院の窓口負担を3割にする機能だけでなく、「働けなくなったときの所得保障」の機能も含まれています。保険料を払っている会社員なら、追加の加入手続きなしで使える権利です。
ポイントは「業務外」であることです。仕事中や通勤中のケガ・病気は労災保険の担当で、傷病手当金の対象ではありません。プライベートでのケガ、がんなどの病気、そしてうつ病などのメンタル不調による休職——こうした「仕事以外が原因で働けない」場面を広くカバーします。
誰が使える?|会社員・公務員は対象、自営業の国民健康保険には原則ない
使えるのは、勤め先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合など)に被保険者本人として入っている人です。正社員だけでなく、勤務先の社会保険に加入しているパート・契約社員も対象です。一方で、自営業やフリーランスの方が入る国民健康保険には、傷病手当金は原則ありません。また、配偶者の扶養に入っている方(被扶養者)も対象外です。「会社員でいることの見えない保険」と言われる理由がここにあります。
利用理由の第1位はメンタル不調|受給者の約35%
協会けんぽの調査(令和5年度)によると、傷病手当金の受給理由の第1位は「精神及び行動の障害」=メンタル不調で、全体の35.2%。がん(新生物)の13.6%を大きく上回り、60歳未満のすべての年代で最多です。「傷病手当金=大病やケガの制度」というイメージがあるかもしれませんが、実際にいちばん使われているのは、うつ病・適応障害などによる休職です。働き盛りの40代にとって、これは決して遠い話ではありません。
【月給別早見表】傷病手当金はいくらもらえる?
計算式|1日あたり「標準報酬月額の平均÷30×3分の2」
傷病手当金は1日単位で計算されます。計算式は次のとおりです。
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2
ざっくり言えば「直近1年の月給の平均の、日割りの3分の2」です。ここでいう「30日」は暦の日数ではなく固定の数字で、÷30した金額は10円単位に、3分の2を掛けた金額は1円単位に整えられます(端数処理)。
標準報酬月額とは?|社会保険料を計算するための「基準のお給料」
標準報酬月額とは、毎年4〜6月の給与の平均をもとに決められる、社会保険料を計算するための基準額のことです。基本給だけでなく、残業代や通勤手当も含めた「額面の月収」に近い金額で、健康保険料や厚生年金保険料もこの金額をもとに計算されています。ご自身の標準報酬月額は、給与明細の健康保険料から逆算するか、勤務先の担当部署に確認すれば分かります。おおむね「額面月収に近い金額」と考えて差し支えありません。
月給別早見表|1日あたり・1ヶ月あたりの目安
| 標準報酬月額(月給の目安) | 1日あたり | 1ヶ月(30日分)の目安 |
|---|---|---|
| 26万円 | 約5,780円 | 約17.3万円 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約20.0万円 |
| 34万円 | 約7,553円 | 約22.7万円 |
| 38万円 | 約8,447円 | 約25.3万円 |
| 41万円 | 約9,113円 | 約27.3万円 |
| 47万円 | 約10,447円 | 約31.3万円 |
| 53万円 | 約11,780円 | 約35.3万円 |
出典:協会けんぽの計算方法(12ヶ月平均の標準報酬月額÷30×2/3)をもとに筆者が機械的に計算。直近12ヶ月の平均で計算されるため、昇給・残業の増減があった方は多少前後します。あくまで目安としてご覧ください。
賞与は計算に入らない|「年収の3分の2」ではない
ここが40代の家計でいちばん誤解しやすいポイントです。傷病手当金の計算に、賞与(ボーナス)は含まれません。標準報酬月額は毎月の給与をもとに決まる金額だからです。
たとえば「月給38万円+賞与年150万円=年収約600万円」の方の場合、「年収600万円の3分の2だから年400万円くらい」と考えたくなりますが、実際の傷病手当金は月約25.3万円×12ヶ月=年間約304万円。賞与のぶんだけ、想像より約100万円少なくなります。しかも休職中の賞与自体、勤務実績に応じて減額・不支給とする会社が多くあります。賞与を住宅ローンのボーナス払いや教育費にあてているご家庭ほど、この差が家計に効いてきます。ボーナスの手取りの仕組みはボーナスの手取りが少ないのはなぜ?で詳しく解説しています。
入社1年未満で休職したら?|「32万円」の上限がある
転職して間もない時期に倒れた場合など、加入期間が12ヶ月に満たない場合は、①入社からの標準報酬月額の平均と、②全国平均の標準報酬月額(2025年4月1日以降の支給開始は32万円)のいずれか低いほうで計算されます。つまり、転職直後に高い給与をもらっていても、1日あたり約7,113円(32万円÷30×2/3)が実質的な上限になります。転職を考えている40代の方は、頭の片隅に置いておきたいルールです。
いつまでもらえる?|「通算1年6ヶ月」の意味(2022年改正)
支給期間は「支給開始日から通算して1年6ヶ月」
傷病手当金がもらえる期間は、同じ病気・ケガについて支給を開始した日から「通算」1年6ヶ月です。この「通算」が重要で、2022年1月の健康保険法改正で導入されました。
改正前は「支給開始日から暦の上で1年6ヶ月」だったため、途中で復職した期間も期間消化にカウントされていました。改正後は、実際に支給を受けた日だけを足し算する方式に変わり、復職して支給が止まっていた期間はカウントされません。たとえば6ヶ月休職→復職→再び悪化して休職、という経過でも、残り1年分の支給を受けられます。がん治療やメンタル不調のように「治療と仕事を行き来する」病気の実態に合わせた改正で、「一度復職したら権利が減っていく」という心配はいまはありません。
実際の平均は約7ヶ月|1年6ヶ月は「使い切る」ものではない
協会けんぽの調査では、傷病手当金の平均支給期間は約219日=約7ヶ月です(精神疾患はこれより長い傾向)。1年6ヶ月はあくまで上限で、多くの方はそれより早く復職しています。「最長1年6ヶ月の所得保障がある」と知っているだけで、療養に専念する心の余裕がまるで違います。逆に言えば、1年6ヶ月を超えても働けない状態が続く場合は、障害年金など次の制度への切り替えを考える段階になります(記事後半のよくある質問で触れます)。
もらうための4つの条件と「待期3日間」の数え方
支給される4つの条件
傷病手当金が支給されるのは、次の4つをすべて満たしたときです。
- ①業務外の病気やケガの療養のための休みであること(労災対象の傷病や、美容整形など病気と見なされないものは対象外)
- ②仕事に就くことができないこと(医師の意見と仕事の内容をもとに判断されます。自己判断ではなく、医師の証明が必要です)
- ③連続する3日間を含んで4日以上仕事に就けなかったこと(次で詳しく説明する「待期3日間」)
- ④休んでいる間に給与の支払いがないこと(給与が一部支払われている場合は、傷病手当金より少なければ差額が支給されます)
待期3日間とは?|「連続3日」がカギ。有給・土日でもOK
待期(たいき)とは、支給が始まる前に必要な「連続した3日間の休み」のことです。働けなくなった日から連続する3日間の待期が成立して、4日目以降の休みから支給対象になります。数え方のルールは次のとおりです。
- 「連続」3日間が必要。2日休んで3日目に出勤すると、待期は成立せずリセットされます
- 有給休暇で休んだ日も待期にカウントされます(待期の3日間は給与が出ていても構いません)
- 土日・祝日などの公休日もカウントされます。金曜に倒れて土日を挟めば、金土日で待期成立です
つまり「最初の3日間は有給で穴埋めし、4日目からの無給の休みを傷病手当金でカバーする」という組み合わせが実務上の基本形になります。
有給休暇と傷病手当金、どちらを先に使う?
休職に入るとき、多くの方が迷うのがこの順番です。有給休暇中は給与が満額出るので、その間傷病手当金は支給されません(4条件の④)。「まず有給を使い切ってから傷病手当金に切り替える」のが収入面では有利です(有給=10割、傷病手当金=約6.7割)。一方で、「復職後の通院や体調不良に備えて有給を残しておきたい」という考え方もあります。正解が1つある話ではないので、療養の見通しを医師と話したうえで、ご自身の状況で判断してください。判断に迷う場合は、会社の人事・労務担当に「有給消化と休職の切り替えタイミング」を相談するのが現実的です。
手取りが「3分の2」より少なく感じる3つの理由
「3分の2もらえるなら、なんとかなりそう」——そう感じた方にこそ知っておいてほしいのが、ここからです。実際に休職した方の多くが「思ったより残らない」と感じます。理由は3つあります。
理由①|賞与が計算に入らない(年収ベースでは6割前後になることも)
先ほど見たとおり、傷病手当金は月給ベースの3分の2で、賞与は含まれません。賞与の比重が大きい会社にお勤めの方ほど、年収ベースで見ると「3分の2」ではなく「6割前後」まで下がることがあります。まずご自身の「月給と賞与の比率」を確認してみてください。
理由②|休職中も社会保険料の支払いは続く
意外に知られていませんが、休職中も健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料は免除されません。給与がゼロになると天引きができないため、多くの会社では本人負担分を毎月会社に振り込む(または立て替えてもらい復職後に精算する)ことになります。標準報酬月額38万円の方なら、社会保険料の本人負担分はおおむね月5〜6万円。傷病手当金約25.3万円から実質的にこれが出ていくと考えると、手元に残るのは月20万円前後です。
理由③|住民税は「前年の所得」に課税される
住民税は前年の所得をもとに計算されるため、休職して収入が減った年も、元気に働いていた前年分の住民税を払い続けることになります。給与天引きができなくなると、市区町村から納付書が届き、自分で納める方式に切り替わります。「働いていないのに数万円の納付書が届く」のは、休職経験者が口を揃えて挙げる想定外の出費です。住民税の仕組みは住民税が2026年6月から上がった理由で詳しく解説しています。
救いもある|傷病手当金は非課税
一方で、良い知らせもあります。傷病手当金は非課税所得で、所得税も住民税もかかりません。確定申告も不要です(翌年の住民税の計算対象にもなりません)。つまり「額面の3分の2」がそのまま受け取れて、翌年の住民税は大きく下がります。苦しいのは「休職1年目」に集中する、という時間の構造を知っておくだけでも、資金計画は立てやすくなります。
申請の流れと退職時の注意点|「退職日」に落とし穴がある
申請の流れ|5つのステップ
申請は難しくありませんが、書類に「本人」「医師」「会社」の3者の記入が必要です。流れは次のとおりです。
- ステップ①:医師に「働ける状態ではない」ことを相談し、療養の方針を決める(この日付が起点になります)
- ステップ②:会社の人事・労務担当に休職の連絡をし、「健康保険傷病手当金支給申請書」を入手する(協会けんぽのサイトからもダウンロードできます)
- ステップ③:本人記入ページ(振込口座など)を書き、医師に療養担当者記入ページを書いてもらう(文書料がかかる場合があります)
- ステップ④:会社が勤怠と給与の証明ページを記入し、保険者(協会けんぽ・健康保険組合)に提出する
- ステップ⑤:審査を経て指定口座に振り込まれる。以後は1ヶ月ごとに区切って申請を繰り返すのが実務上の一般的なペースです
注意したいのは、医師の証明は「これから休む期間」ではなく「実際に休んだ期間」について事後に書いてもらうものだという点です。このため申請はどうしても後追いになり、初回の振込までは書類の準備期間も含めて時間がかかります。休職を始めてから最初の入金までの生活費として、最低でも1〜2ヶ月分の現金は手元に確保しておきたいところです。物価が上がる時代の生活防衛資金は「金額」ではなく「生活費の何ヶ月分」で考えるのが目減りに強い持ち方です。
退職してももらえる?|継続給付の2つの条件
療養が長引くと、「いっそ退職したほうが会社に迷惑をかけないのでは」という考えが頭をよぎります。実は、次の2つを満たせば退職後も引き続き傷病手当金を受け取れます(資格喪失後の継続給付)。
- ①退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者期間があること(転職していても、1日も空白なく健康保険が続いていれば通算できます。任意継続の期間は含まれません)
- ②退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること(待期3日間が成立していること)
最重要の落とし穴|退職日に出勤すると、その後の給付がゼロになる
ここは、この記事でいちばん強くお伝えしたい注意点です。退職日に出勤すると、退職日の翌日以降の傷病手当金は受け取れなくなります。「最終日くらいは挨拶に行こう」「引き継ぎだけ出社しよう」——その善意の1日で、「退職日時点で働けない状態」という継続給付の条件が崩れてしまうのです。協会けんぽも公式にこの点を明記しています。療養で退職する場合、挨拶や私物の整理は退職日より前に済ませるか、郵送などで対応し、退職日当日は絶対に労務に就かない。これだけで、その後最長1年以上の給付が守られます。
「辞めるかどうか」は回復してから決める
そもそも論として、療養の初期に退職を決める必要はありません。休職して傷病手当金を受けながら回復を待ち、働ける状態に戻ってから今後を考える——この順番なら、収入を保ちながら選択肢を残せます。体調が悪いときの重大な決断は、判断力そのものが落ちている状態での決断です。「決めない」という選択肢があることを覚えておいてください。
40代が申請をためらう3つの心理|制度は「権利」です
制度を知っていても、いざ自分のこととなると申請をためらう——これは40代の相談で本当によくある心理です。お金の問題の手前にある、3つの心のブレーキを言葉にしておきます。
ブレーキ①|「同僚に迷惑をかける」という罪悪感
責任感の強い人ほど、休むこと自体に罪悪感を抱きます。ですが、傷病手当金は会社のお金ではなく、あなたが毎月払ってきた健康保険料から支払われる保険給付です。20年働いてきた40代なら、20年分の保険料を払い続けてきた計算になります。使うことは迷惑ではなく、契約どおりの権利の行使です。むしろ無理を重ねて長期離脱になるほうが、結果として職場への影響は大きくなります。
ブレーキ②|「キャリアに傷がつく」という不安
「休職歴があると出世に響くのでは」という不安も根強くあります。この不安を消し去ることはできませんが、1つだけ数字を示せます。受給理由の35%がメンタル不調——つまり休職は、あなたが思っているよりずっと「よくあること」です。だからこそ2022年に国が法律を変えてまで、復職と療養を行き来しやすい「通算方式」に改めました。制度の側が「一度休んでも戻ってくる」ことを前提に設計されているのです。
ブレーキ③|「手続きをする気力がない」
特にメンタル不調のときは、申請書を取り寄せて記入すること自体が高いハードルになります。これは甘えではなく症状です。申請書の本人記入欄は、家族が代わりに下書きしても構いません(署名など本人が必要な箇所は別として、情報を集めて整えるのは家族ができます)。配偶者の方がこの記事を読んでいるなら、「書類は私が用意するから、あなたは療養に専念して」の一言が、何よりの支援になります。申請には期限(時効2年)もあるため、後回しにせず、動ける人が動くのが正解です。
FP相談実例|44歳・うつ状態で10ヶ月休職した会社員の場合
実際の家計がどう動くのか、相談実例で見てみます(プライバシー保護のため、複数の相談をもとに再構成した例で、実在の個人の事例ではありません)。
相談者:44歳・製造業勤務・標準報酬月額41万円(賞与込み年収約650万円)。妻はパート勤務(月8万円)、子どもは中2と小5。うつ状態と診断され、10ヶ月休職。
休職中の収入と支出はこうなりました。傷病手当金は月約27.3万円。ここから会社に振り込む社会保険料の本人負担分が約6万円、前年所得ベースの住民税が月約3万円。実質的に手元に残るのは月18万円前後で、休職前の手取り(月約32万円)から4割減。妻のパート収入と合わせて月26万円で、月々の生活は「貯金を月3〜4万円ずつ取り崩せば回る」水準でした。
家計として効いた打ち手は3つです。1つ目は、初回振込までの2ヶ月を生活防衛資金でつないだこと。医師の証明が事後になる関係で、最初の入金までは無収入期間が生じます。ここで慌てて教育資金に手を付けずに済んだのは、生活費6ヶ月分の現金があったからでした。2つ目は、通院費に高額療養費制度を併用したこと。医療費の自己負担には月ごとの上限があります。仕組みは高額療養費制度は2026年8月からどう変わる?にまとめています。3つ目は、休職2ヶ月目に固定費を月2.1万円削ったこと。使っていないサブスクと保険の重複を整理しただけで、年25万円の支出減。体調が戻り始めた時期に「家計の主導権を取り戻せた」実感が、本人の回復にも良い方向に働いたそうです。
この方は10ヶ月で復職し、通算方式のおかげで「また悪化したら残り8ヶ月分の枠がある」という安心感を持って働けています。振り返っての本人の言葉が印象的でした。「金額を知る前は『倒れたら終わり』だと思っていた。数字にしたら『18万円は入ってくる』に変わった。あの計算が一番の薬だった」。
よくある質問|パート・うつ病・ボーナス・2回目はどうなる?
Q1. 扶養内で働く妻(夫)や、自営業でも使える?
勤務先の社会保険に本人として加入していれば、パート・契約社員でも使えます。一方、配偶者の扶養に入っている方(被扶養者)と、国民健康保険の方(自営業・フリーランス)は原則対象外です。フリーランスへの独立を考えている方は、「傷病手当金がなくなる」ことを織り込んで、生活防衛資金や民間保険の要否を判断する必要があります。保険で備える範囲の考え方はがん保険は40代に必要か?でも整理しています。
Q2. うつ病・適応障害でももらえる?
もらえます。むしろ受給理由の第1位(35.2%)がメンタル不調です。条件は身体の病気と同じで、医師(精神科・心療内科)による「労務不能」の証明が必要です。「気分の落ち込みくらいで申請していいのか」と迷う方が多いのですが、判断するのはあなたではなく医師です。まず受診して相談することが第一歩です。
Q3. 休職中のボーナスはもらえる?
賞与は法律上の支給義務がなく、会社の就業規則(賞与規程)次第です。査定期間の勤務実績に応じて減額・不支給とする会社が多数派です。休職を考え始めたら、就業規則の「休職」「賞与」の条文を一度確認しておくと、資金計画の精度が上がります。
Q4. 一度使い切った後、別の病気になったら?
通算1年6ヶ月のカウントは「同じ病気・ケガ」ごとです。まったく別の傷病で働けなくなった場合は、待期3日間からやり直して、新たに通算1年6ヶ月の支給を受けられます。ただし「同じ病気の再発」と「別の病気」の線引きは医学的な判断になるため、保険者の決定によります。
Q5. 1年6ヶ月を過ぎても働けないときは?
傷病手当金が終わった後の所得保障は、障害年金(障害厚生年金・障害基礎年金)が候補になります。初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)以降に請求でき、傷病手当金とちょうどバトンタッチする時間設計になっています。なお、同じ傷病で障害厚生年金を受け取る場合、傷病手当金との二重取りはできず調整されます。年金制度全体の見取り図はねんきん定期便の見方をFPが完全解説もあわせてどうぞ。
まとめ|「倒れたら終わり」ではないと、数字で知っておく
- 傷病手当金は給料のおよそ3分の2×通算1年6ヶ月。月給30万円なら月約20万円、月給41万円なら月約27.3万円
- 賞与は計算に入らない。年収ベースでは6割前後になる家庭も多い
- 支給条件は4つ。連続3日間の待期は有給・土日でもカウントされる
- 休職中も社会保険料と前年分の住民税の支払いは続く。一方、傷病手当金自体は非課税
- 初回振込まで時間がかかるため、生活費1〜2ヶ月分以上の現金が命綱になる
- 退職しても条件を満たせば継続給付あり。ただし退職日に出勤したらその後の給付はゼロ
- 受給理由の1位はメンタル不調(35.2%)。申請は迷惑ではなく、払ってきた保険料に基づく権利
この記事を読んだからといって、病気やケガが避けられるわけではありません。それでも、「もし倒れたら、月いくら入ってきて、何がいつまで続くのか」を知っている人と知らない人では、不安の大きさがまるで違います。お守りは、使わないまま終わるのがいちばんです。どうか使う日が来ませんように——そう願いながら、この記事をお守り代わりにブックマークしていただければ嬉しいです。
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「倒れたら終わり」と思いながら働いていた頃の私に、この記事を届けたいのです。
20代の頃の私は、ギャンブルで作った負債を抱え、貯金はゼロでした。あの頃いちばん怖かったのは、負債の残高ではなく「もし病気で働けなくなったら、この家は一ヶ月で崩れる」という感覚です。怖いから、考えない。考えないから、備えない。健康保険料が何のために引かれているのかも知らないまま、ただ毎日出社することだけが唯一の安全策でした。
家計を立て直す中でFPの勉強を始めて、傷病手当金という制度を初めてきちんと知ったとき、正直に言えば少し腹が立ちました。「こんな大事なこと、誰も教えてくれなかったじゃないか」と。倒れても月々のお金は入ってくる。それを知っているだけで、あんなに張り詰めて働かなくてよかったのです。知識は、不安を消しはしませんが、不安を「数えられる大きさ」にしてくれます。
この記事を閉じたら、ご自身の標準報酬月額を給与明細で確かめて、早見表に当てはめてみてください。そして、その数字を夕食のときにでもご家族と共有してみてください。「うちは倒れても月◯万円は入る」——その一言は、家族にとって何よりの安心材料になります。3分でできる、いちばん確かなお守りづくりです。
あなたとご家族が、お金の不安から自由になりますように。それがこのブログを書き続けている、たった一つの理由です。
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免責事項
本記事は2026年7月時点の公表情報(全国健康保険協会・厚生労働省の公式情報等)に基づいて執筆しています。傷病手当金の支給額・支給可否は、標準報酬月額・加入する保険者・個別の事情により異なります。健康保険組合には独自の付加給付がある場合があります。早見表・計算例は機械的な概算であり、実際の支給額を保証するものではありません。個別の判断は、加入先の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)、勤務先の担当部署、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。
出典・参考資料
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金について」(資格喪失後の継続給付) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html
- 全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査報告(令和5年度)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/cat740/c2024090601.pdf




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